ニセアカシア [ハチミツの花]
「ハチミツの女王」とも呼ばれているのが、ニセアカシアのハチミツです。色が淡く、やさしい香りがあり、クセのない上品な甘さは日本人が好むハチミツの一つ。果糖分が多いことから結晶することがほとんどなく、クセもないことから、さまざまに利用できるのも人気の要因でしょうか。ハチミツ初心者には、ぜひおすすめです。
新潟市北区の「海辺の森」は、ニセアカシアの木が海岸に沿って細長く続く憩いの場所。訪れてみると鈴なりの花々にミツバチたちがせっせと通い、花にもぐりこんでミツを吸っていました。大量にミツを出すときは、木の下にいると滴り落ちるほどだとか。養蜂家、特に東日本の養蜂家にとっては、なくてはならないミツ源の一つです。周囲に甘い香りを漂わせ、白い蝶形のかわいい花が房状に垂れ下がって咲くニセアカシア。北米原産のマメ科の樹木で、高さ25mにまでなります。日本には明治6年に導入され、荒廃地の緑化、庭木、街路樹、砂防林、肥料木、ミツ源植物、薪炭材として、全国で広く利用されてきました。根に根粒菌が付き、空気中の窒素を取り込んで利用できる形にするので荒れた土地でも育ち、いち早く地表を覆って後継樹の成長を助け、緑化を促す役目を担います。
以前、北海道の島牧村に、転地養蜂家の光源寺さんを訪ねたことがあります。光源寺さんは島牧村で、他に利用価値の低いこの辺の山林をコツコツと購入し、ニセアカシアを植林し続けてきました。訪れたのは晩秋。光源寺さんに案内されて山に向かうと、植えてから3年ほど経つという若木の枝先にサヤが付いて風に揺れています。豆が付いているということは、花が咲いてミツバチが訪れ、受粉したということです。これらが順調に育っていけば、かなりのミツ源になるはずです。山が他人のものなら、伐られても文句は言えない。そこが、養蜂家の弱みでもあります。だから光源寺さんは、自分で木を植えようとしているのです。
「ニセアカシアを植林しようなんていうのは、ハチ屋(養蜂家)以外いないですよ。これからは投資も必要です。植林は、最初はほとんど失敗。植えたのが全部花を付けりゃいいけど、こればかりはわからない。でも、木がたくさんあればいいわけです。ミツ源の絶対数が少なければどうしようもないですから」。最近は、地元の協力者も増えているといいます。ニセアカシアの甘い香りで、山全体が満ちることを期待したいですね。
撮影/'07.11.5・’10.6.6
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