夏ミカン [くだものの花]
山陰の小京都、萩。一度はぜひ訪れてみたいと思っていた町でした。古い町並みがそのまま残り、維新で活躍した藩士たちの生家なども現存。今回、行くことにしたのは、萩が夏ミカンの産地であるとわかったから。夏ミカンは黄色く色づいても酸っぱくて食べられません。収穫した後、貯蔵して酸を抜くか、翌年の初夏まで木成りで完熟させることで酸が抜けます。初夏の時期に食べられるミカンということから、夏ミカンと呼ばれるようになったのです。ミカンの花はあちこちで見ましたが、萩ならではの武家屋敷との共演が今回は楽しみです。
萩に到着したのは夕方。さっそく、古い町並みが残る一角を散策しました。歩くのが楽しい街というのは久しぶりのような気がします。萩は城下町らしく、升目状に小道が続き、所々が鈎状になっています。土塀が連なり、屋敷内から顔を覗かせる夏ミカンの花。甘い香りが町全体に漂っていて気持ちがいい。木戸孝之の生家の庭にも夏ミカンの木があり、花が満開です。街中の小さな公園のようなスペースにも、夏ミカンが植えられていました。この木には白い花が鈴なりです。また萩には、市内を西廻り、東廻りの循環バスが走っていて、どこまで乗っても100円均一。観光名所にバス停が設けられているので、観光客にとっては重宝します。乗ってみると、けっこう地元の人たちの利用も多いようです。
翌朝、早起きして6時くらいに宿を出、昨夕に下見しておいたポイントをまわりました。土塀の上から覗く夏ミカンの白い花を、朝日が照らして輝きます。中には、黄色い実がついた木も。木成りで冬を越し、酸が抜けておいしくなっているに違いありません。ネコが一匹、土塀の屋根の上でひなたぼっこ中。何枚か写真を撮っていると、「なんだよ、うるせぇなぁ」とでも言いたげな視線をこちらに一瞬向けましたが、そのまま目を閉じてしまいました。夏ミカンの花の甘い香りに、寝心地もさぞかしよいことでしょう。
武家屋敷の夏ミカンとは別に、栽培が多いのは萩から3つ目の駅、大井とのこと。駅から5分ほど歩くと、川に沿って夏ミカンの畑が広がっていました。ちょうど畑で作業中のお父さんがいたので、了解を得て花の写真を撮らせてもらいました。花の甘い香りが、鼻をくすぐってきます。夏ミカンの花に夢中になっていたら、萩焼の店を訪ねる時間がなくなってしまいました。今度はぜひ、器を探しに行ってみたいです。
撮影/'03.5.12
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