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リンゴ(1) [くだものの花]

<長野県松本市・安曇野市>リンゴ(1)01.jpg

リンゴ(1)06.jpg

 かなり前になりますが、ゴールデンウィークを利用して、長野県の安曇野へドライブに出かけました。安曇野という名前の響きに惹かれたのと、たまたま本屋で信州の街道を紹介した本を見つけたからです。その中に、安曇野を貫く「日本アルプスサラダ街道」という道があることを知りました。名前から、野菜の産地を結んだ街道なのだろうと想像はつきましたが、興味が湧き、出かけることにしたのです。

リンゴ(1)02.jpg 安曇野に着いて車を走らせていると、家の脇の果樹畑に白い花と濃紅の蕾をつけた木が何本かありました。この時はまったく花というものに関心がなかったのですが、思わずシャッターを切りました。それがリンゴの花だとわかったのは後になってからです。この体験が、くだものや野菜の花の写真を撮り始めるきっかけともなりました。

リンゴ(1)03.jpg その名の通りくだものや野菜の宝庫である日本アルプスサラダ街道の中でも、リンゴづくりが特に盛んなのが、松本市(旧梓川村)と安曇野市(旧三郷村)です。梓川地区のリンゴ栽培は県内では比較的歴史が浅く、昭和初期には4、5軒の農家が栽培していた程度でしたが、全国に先駆けて接ぎ木による矮化(わいか)栽培技術を開発し、生産が増加しました。三郷地区もまた、果樹の一大産地。標高600700mの栽培に適した気候と立地条件のもとで育てられるリンゴは色つきがよく、果実が引き締まって味も濃い。幹線から外れて農道を行けば、両側は一面リンゴ畑です。

リンゴ(1)04.jpg リンゴの栽培に適した条件は、降雨量が少なく日照時間が長いこと。特に昼と夜の寒暖の差が激しいほど味と色の良いリンゴができます。ほぼ全県でおこなわれている信州リンゴの栽培は、その7割が善光寺平・須坂・中野の3地区に集中しますが、この安曇野、佐久なども主要産地です。

リンゴ(1)05.jpg リンゴは短い枝の先に5〜6個の花芽をつけますが、真ん中が最初に開き、少し遅れて側の花が順に開いていきます。リンゴの受粉にミツバチを貸し出している養蜂家の方から、おもしろい話を聞きました。この最初に咲いた花に、48時間以内に受粉されないと実がならないそうです。花を見るなら満開より少し前が見頃。紅色のつぼみも愛らしく、このつぼみが残っている方がきれいです。青い空と白いリンゴの花とのコントラストが心地好い安曇野の春。観光客もリンゴの花には興味がないのか、幹線を逸れれば観光地とは思えないような静けさです。日本アルプスサラダ街道、好きな道です。


撮影/'97.5.4

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洋ナシ(1) [くだものの花]

<山形県天童市・東根市>洋ナシ(1)01.jpg 買ってきても、しばらくは食べられない。追熟が必要だからです。そのいびつな外見とは裏腹に、中身は濃厚な肉質と特有な香りがあっておいしく、気品のあるくだもの「ラ・フランス」。山形特産のこの洋ナシは、かつて「みだぐなす」と呼ばれていました。みだぐなすとはつまり、見たくなし、見栄えが悪く見たくないものという意味です。

洋ナシ(1)02.jpg 洋ナシが日本に入って来たのは明治の初め。その後、缶詰加工用として、バートレットという品種が盛んに栽培されるようになります。果樹は、単一品種だけでは実を結びにくいため、違う品種を受粉樹として植え、実を結ぶ確率を高めるのです。バートレットの受粉樹として、細々と植えられていたのが、ラ・フランスでした。とても美味であることは生産者の間では知られていたものの、見かけの悪さもあって受粉樹として陰の存在でしたが、昭和40年代に入ると缶詰よりも生食のフルーツへの需要が高まり、ラ・フランスのおいしさが注目され始めたのです。

洋ナシ(1)05.jpg 天童市と東根市の境に、広大な果樹園が広がっています。明治の初期には松林などの原野で、それを果樹畑に開拓し、次第に拡大していったものとか。サクランボ、リンゴ、モモなどに混じって、ラ・フランスが栽培されており、ゴールデンウイーク前後は、これらの果樹が花盛りを迎えます。が、訪れたのが少し早かったのか、洋ナシらしき花は咲いていません。花が咲いていないと、木だけを見てもどれがラ・フランスやら。ちょうど通りかかった果樹園農家のおばあちゃんに、どれがラ・フランスの木かを訊いてみました。教えてもらったのは、割と太い一本の木。やはり花は咲いてなく、まだ早いようです。

洋ナシ(1)04.jpg洋ナシ(1)03.jpg ゴールデンウイークに再度訪れたときは、花が満開となっていました。山形ではラ・フランスの他に、シルバーベルやバートレット、マルゲリットなど10数種類の洋ナシが栽培されているといいます。品種まではわかりませんが、たぶん「ラ・フランス」ということで、写真を撮りました。花は、その果実の濃厚な味わいとは対照的に、清楚な白い花を咲かせます。ラ・フランスは1864年、フランスのクロード・ブランシュ氏が発見し、そのおいしさから「わが国を代表するにふさわしい果物だ」と賛美したことから、その名がついたといいます。しかし、今ではその本国フランスでは栽培されなくなり、日本でしか味わえない品種になっているとか。おもしろいですね。

撮影/'99.4.30  

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マルメロ [くだものの花]

<長野県諏訪市>マルメロ01.jpg のど飴などでおなじみの「かりん」。信州の諏訪湖周辺は、江戸末期以来のかりんの産地で、NHK朝の連続テレビ小説「かりん」の舞台にもなりました。ですが、ここで言う「かりん」とは、実はマルメロのこと。中国から長崎に渡来したマルメロが、江戸から諏訪に入ったのは約400年前。導入当初から「かりん」と呼ばれていましたが、専門家に鑑定を依頼したところ、かりんではなく実はマルメロだったことが判明。しかし、長い間「かりん」と呼ばれ、加工品もかりんで宣伝され、諏訪地方に定着していたため、その後も「かりん」と呼ばれて現在に至っているとのだとか。なんだかややこしい話ですね。

マルメロ02.jpg マルメロはバラ科の落葉樹。花は、同じバラ科のリンゴやナシが一芽からたくさん咲くのとは異なり、先端に花径4〜5cmの大きな花を一つずつつけるのが特徴です。花びらは5枚で、花色は白または淡紅色。このマルメロの花を気軽に楽しむなら、諏訪湖畔の「かりん(マルメロ)並木」がお勧めです。この並木は、湖畔道路が完成した昭和41年春に、市が「諏訪市の特色づくりを」と植樹し、育てたもの。湖畔公園付近からヨットハーバーの先まで約1,200mの間に約200本植えられています。ちなみに、本来のかりんも30本植えられているとのこと。見比べてみるのもいいかもしれません。

マルメロ03.jpg 諏訪湖スタジアム近くで、リンゴなどとともにマルメロを栽培している果樹園を見つけたので見せてもらいましたが、まだ蕾の状態。諏訪湖ほとりの並木と、距離はそれほど離れていないのに、開花にはだいぶ差があります。「米もやっているからこの時期は大変だよ」と、果樹園のお父さん。果樹園の周りは田んぼで、ちょうど田植えシーズン。どの農家も苗を運んで、田植え作業に取りかかっています。天気も上々、絶好の田植え日和です。

マルメロ04.jpgマルメロ05.jpg 蕾じゃ仕方ないと、果樹園周辺を散策していたら、諏訪湖スタジアムの前を流れる宮川の脇に、ちょうど花を咲かせていたマルメロの畑を発見。引き寄せられたという感じですが、なるほどマルメロの花言葉は「誘惑」。本数はそう多くはありませんが、堤防より低い土地に植えられているので、花がちょうど目の高さになり、観賞しやすくなっています。朝の散歩でしょうか、犬を連れた女性2人や若いカップルなどが横を通り過ぎていきますが、マルメロの花には目も止めない様子。地元ではやはり、見慣れているのでしょうね。

撮影/'99.5.9

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ナシ [くだものの花]

<鳥取県湯梨浜町>ナシ01.jpg なんだか怪しげです。一台の車が家陰に隠れ、中で男が二人、じっと息をひそめています。警察に通報しようかどうしようか迷っていたら、なんと交通違反を取り締まっていた覆面パトカーでした。ナシ畑を探してさっきから付近をうろうろ。怪しまれていたのは、実はこちらだったのかも……。

ナシ03.jpg 昨夜から降り続いていた雨は、朝には上がったものの、どんよりとした雲が立ちこめています。周囲12kmの東郷池畔にある鳥取県湯梨浜町(旧東郷町)は、なだらかな丘陵地に二十世紀ナシをはじめとした大果樹園が広がるくだものの産地。「東郷町らしいナシ畑の風景ですか? 写真を撮られるんでしたら、東郷池に面した『のきょう』という地区がいいと思います」と、役場の方に教えていただきました。漢字で書けば「野花」、ロマンティックな地名です。

ナシ04.jpg 東郷町に着いて、さっそく東郷池ほとりの野花へ。池のほとりから振り返ると、小高い丘の斜面に白い花が咲いた一角を発見。おそらくナシ畑でしょう。あそこからならナシの花と東郷池を、一枚の写真に納めることができそうです。公共の駐車場に車を留め、山に続く小道を上りました。ナシ畑で農作業をしていた農家の方に伺うと「うちの畑は、花は終わったけど、この手前の畑がまだ咲いていると思う」とのこと。細い脇道を見つけ、上っていくと花が満開のナシ畑が広がっていました。

ナシ02.jpg ナシ畑はかなりキツい急斜につくってあります。しかも、ナシ棚が低く、腰を曲げないと頭が付いてしまう。この方が収穫がラクなのかな。でも、農作業は大変そうです。畑仕事をしていたおじさんが向こうに見えたので、大声と身ぶり手振りで写真を撮らせてもらおうと頼みました。それに気づいたおじさんは、ニコニコと穏やかに笑いながら首を縦に振ってくれます。二十世紀ナシかどうか訊ねると、「一番手前の木だけ幸水だけど、あとは二十世紀」とだけ言って、また黙々と畑仕事を続けます。おじさんが移動すると、葉に隠れて姿が見えなくなりました。

ナシ05.jpg

 爪先立つとナシ棚から頭が出、枝先の花が目の当たりになります。枝先に数個の白い花をつけ、中心の蕾が最初に開き、外側に向かって順に開いていくナシ。花の真ん中から雄しべが伸び、花粉の入った赤い葯がアクセントになっています。よく見ると、とてもかわいい花です。そのナシの花越しに東郷池が見えました。これで、晴れていたら文句ないのですが……。

撮影/'00.4.20

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ブドウ [くだものの花]

<山梨県甲州市>ブドウ01.jpg 必ずしもいいブドウからいいワインができるとは限らないが、悪いブドウからは決していいワインはできない──。ワイナリーで聞いた話ですが、なるほどと思いました。畑から吸い上げたいろんな成分が瓶に詰められるから、畑ごとにワインが違うというのも納得です。

ブドウ02.jpg 丘から望むと見渡す限りブドウ畑が続き、視界の両端は山が迫って、奥には甲府盆地が広がります。甲府盆地の東端、日川の扇状地を中心にブドウ畑が広がる甲州市勝沼は、ブドウ、ワインの生産量日本一の町。ブドウは、世界で最も多く栽培されている果実ですが、その80%はワインに加工されているそうです。日本でのブドウ栽培は、718(養老2)年に奈良時代の高僧行基が中国から持ち帰り、勝沼で栽培したのが始まりといわれています。勝沼はまた在来種である甲州ブドウの発祥地であり、甲州街道の宿場として栄えた江戸時代には、すでにブドウの名産地でした。

ブドウ03.jpg 勝沼は耕地の99.8%が果樹園、そのうち80%がブドウ園だとか。130軒ほどある勝沼のブドウ園では巨峰、甲州、甲斐路、デラウエア、ネオマスカットなど、30種ほどが栽培されています。地域全体が扇状地で、日当りの良い南西面に3度から5度の傾斜が広がります。気象的にも最高気温39℃、最低気温マイナス13℃、年間の平均気温13.6℃と、典型的な内陸性気候です。春に多少の降雨があり、開花時期は高温、乾燥。成核期に雨が降り、着色から落葉の期間まで晴天に恵まれ、秋は吹きおろす冷たい風によってブドウに着色と味覚が加えられるのだとか。

ブドウ06.jpg この勝沼のシンボルとなっているのが、小高い丘のてっぺんにある町営「ぶどうの丘」。ここからは一面に広がるブドウ畑が望め、家以外はすべてブドウ畑じゃないかと思えるほど。甲府盆地の向こうに南アルプスの山並みが望めるはずですが、あいにく水蒸気で遠景がかすんで見えません。

ブドウ04.jpg 「ブドウは花なんて咲くの?」という人がいましたが、花が咲かなければ実は結びません。考えれば当然のことですが、バラのような華やかな花びらが無く、雌しべと雄しべのみで、枝の一部に円錐花序につきます。だから花という感じがしないのでしょう。ブドウの場合、花を愛でるというより、季節ごとに彩りを変えるブドウ畑の風景を楽しむのがよさそう。ブドウは秋に紅葉し、これがなかなか美しい。ブドウ・ワイン尽くしの旅というのも、いいかもしれませんね。

撮影/'98.5.22

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モモ(2) [くだものの花]

<福島県福島市・伊達市>モモ(2)01.jpg 福島県福島市は、モモの一大産地。春に訪れると、一面のモモの花が出迎えてくれます。福島市のキャッチフレーズは「いで湯とくだものの里」。このモモに始まり、ナシ、リンゴと、春を果樹の花が彩ります。街の西側、飯坂温泉から土湯街道にかけての14kmほどは、街道沿いに果樹園が広がる「フルーツライン」。国道13号線から飯坂温泉にかけてはモモ畑が多く、地図には「ピーチライン」と記されています。国道から小道へと入り、小高い山を上ってみました。眼下には福島の街。モモの花は、葉より先に5弁の花を咲かせます。ウメやサクラよりも少し大きく、ぽってりとした感じで艶やか。モモのふっくらとした花は、見ているだけで幸福感に包まれます。

モモ(2)02.jpgモモ(2)03.jpg 福島市の隣、伊達市もモモの産地。平坦で肥沃な土地に広いモモ畑が広がります。伊達市で栽培されている品種は、白鳳、あかつき、川中島白桃、ゆうぞらなど。伊達市一帯は、かつて阿武隈川が氾濫を繰り返したため、肥沃な川砂が堆積し、おいしいくだものをつくるのに適した土地で、モモの他にもサクランボやリンゴ、洋梨にブドウ、イチゴ、キウイなどが栽培されています。

モモ(2)04.jpg

 畑をまわっていると、農作業を始めたおじさんに出会いました。「新潟に視察で行ったことがあるよ」など、しばし世間話。この辺は「あかつき」という品種が主力だそうです。「愛宕神社の展望台から見る風景もなかなかいいよ」と教えられ、上ってみると、おじさんの言う通り、見晴らしが抜群。阿武隈川、福島市の街並み、新幹線の高架、遠くには盆地を取り囲む山々もうっすらと望めます。先ほど歩き回っていたモモ畑も一望できました。

モモ(2)05.jpg

 おじさんが視察で行ったという新潟市南区も、モモの産地。花が満開の時期に訪れると、頼もしい助っ人としてミツバチたちが大活躍。花から花へと飛び回り、確実に授粉していきます。ミツバチを使うことで花粉交配がスムーズにいき、結果しなかったり形が悪くなったりすることが少なくなります。現在、100を超える野菜やくだものが、ミツバチを利用したポリネーション(花粉交配)を導入しているといわれています。ミツバチによるポリネーションの貢献度は、金額に換算すると全世界で約24兆円にもなると、フランス国立農業研究所がはじき出しました。日本での数値は出ていないようですが、かなりの貢献度になるはず。農作物の安定供給にはミツバチの力が欠かせないんですね。

撮影/'98.4.20

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モモ(1) [くだものの花]

<山梨県笛吹市>モモ(1)01.jpg 中央高速道を諏訪方面から甲府方面へ向かうと、正面に富士山がくっきりと見えました。これは、幸先いいかも。砂壌土で排水の良い複合扇状台地という恵まれた環境にある甲府盆地は、夏を代表するくだもの「モモ」の全国一の産地。見渡す限りのモモ畑が広がり、4月になれば、一面が文字通りモモ色の花霞となります。中でも笛吹市一宮町は、440ha30万本が植えられているモモの里です。

モモ(1)06.jpgモモ(1)04.jpg 役場からパンフレットといっしょに送ってもらった絵葉書には、咲き競うモモの花の眼下に甲府盆地、その奥には残雪の南アルプスの山々が。さて、あの風景はどこから写したものか。山の中腹からだろうと予想はできますが、なにせ初めて訪れる場所で土地勘がありません。勘を頼りに、高台へと続いていそうな道へと入っていき、少し上ると両側にモモの畑が続いていました。すでに数人のカメラマンが陣取っています。どうやら、絶好の撮影ポイントのよう。振り返ると、モモの花の向こうに南アルプスがくっきり。もう空気までもがモモ色に染まったかのようです。

モモ(1)02.jpg モモ農家の方が作業の手を休めてカメラを取り出し、作業台の上から写真を撮り始めました。「花の時期に、南アルプスがこんなにくっきり見えるのは、何年かに一度だね」。普段は、春霞に煙るのでしょう。どうやら、願ってもない日に訪れたようです。もっといい撮影ポイントはないかと歩き回っていると、「お茶でも飲んでいきませんか」と、果樹園のオーナー夫妻が勧めてくれました。傍らで、手づくりのジャムや桃のコンポートなどを売っています。花を目当てに観光客がどっと訪れるのだから、逃す手はありません。それでも、ささやかな商売は農家ならではですね。

モモ(1)05.jpg 太陽が高く上って暖かくなってくると、シートを広げてモモの花見を楽しむグループも現れ始めました。春の里を華やかに彩るモモの開花。はっきりとした色のせいか、モモの花はウメやサクラに比べ、ふっくらとした感じがします。人々が不老不死のモモを食べてのどかに暮らすという、桃花源記に書かれた「桃源郷」は、一宮のような場所だったに違いありません。一宮に隣接する御坂町も知られたモモの産地。一宮から御坂に向かう途中も、ずっとモモ畑が続いています。御坂でモモの花景色を楽しむなら、一本杉が目印の花鳥山からがおすすめというので向かってみると、一宮同様、南アルプスがモモの花の向こうに望めました。

撮影/'97.4.8

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夏イチゴ [くだものの花]

<秋田県湯沢市>
夏イチゴ01.jpg 最近はさまざまなスイーツが登場し、目移りしてしまいますが、定番はやはり白い生クリームの上に真っ赤なイチゴが飾られたショートケーキ。イチゴって昔は春が旬だったけど、クリスマスを中心にしたケーキなどへの需要が増えたためか、最近は12月あたりから出まわります。当然、ハウス栽培が主流になりますが、そんな中で、夏に旬を迎える露地イチゴがあります。山形県との県境に位置する秋田県湯沢市秋ノ宮地区は、イチゴの露地栽培面積で全国一を誇る、夏イチゴの産地。ハウスと違って自然の天候に影響を受けるため、産地独特の味わいが生まれます。

 最初に訪ねたときは花の時期がそろそろ終わりという頃で、すでに収穫が始まっていました。このとき栽培されていた品種名は「WASA」。おもしろい名だなと思ったら、組合長の名「わさぶろう」から取ったものとか。家族総出でイチゴ摘みをしていた畑で、お母さんが教えてくれました。ここのイチゴは、東京や大阪方面へ出荷されているのだそうです。「どうぞ、食べてみてください」と、息子さんでしょうか、真っ赤に熟した大ぶりのイチゴを手渡してくれました。普段食べているブランドイチゴほど甘くはないけど、適度な酸味があっておいしい。なにせ摘みたてだし。「どぉ、あんまりおいしくないでしょ?」と、お母さん。いや、おいしいですよと言うと、「お世辞なんていいから」と、とてもあっけらかんとした方でした。

夏イチゴ05.jpg夏イチゴ04.jpg 夏イチゴの場合、ケーキ用などが主な用途のため、摘み取ってから出荷し、ケーキ店などに届けられます。ケーキになって客の手元に渡るときに真っ赤であればいいので、そのために早採りするのだそうです。だから逆に、こうした完熟したものは、出荷できないのだとか。摘むときに見過ごすことがあるので、食べさせてもらったイチゴのように真っ赤に熟したものもあるというわけです。

夏イチゴ02.jpg夏イチゴ03.jpg ご夫婦で摘み取りをおこなっていた別の畑で、「もう少し早かったら、イチゴの花見ができたのにねぇ」と奥さん。イチゴの花見? どんな感じなんだろう。ぜひ見たいと思い、翌年、今度は少し早めに訪ねてみました。畑ではその言葉通り、可憐なイチゴの花が見事に咲き誇っています。イチゴの花は白で、花びらは5枚。花の中心に、おしべに囲まれて多数のめしべが集まっています。爽やかな朝の空気とともに味わえるイチゴの花見。早起きして畑仕事に精を出すイチゴ農家の特権です。

撮影/'00.6.22'01.6.3

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夏ミカン [くだものの花]

<山口県萩市>
夏ミカン01.jpg 山陰の小京都、萩。一度はぜひ訪れてみたいと思っていた町でした。古い町並みがそのまま残り、維新で活躍した藩士たちの生家なども現存。今回、行くことにしたのは、萩が夏ミカンの産地であるとわかったから。夏ミカンは黄色く色づいても酸っぱくて食べられません。収穫した後、貯蔵して酸を抜くか、翌年の初夏まで木成りで完熟させることで酸が抜けます。初夏の時期に食べられるミカンということから、夏ミカンと呼ばれるようになったのです。ミカンの花はあちこちで見ましたが、萩ならではの武家屋敷との共演が今回は楽しみです。

夏ミカン05.jpg

 萩に到着したのは夕方。さっそく、古い町並みが残る一角を散策しました。歩くのが楽しい街というのは久しぶりのような気がします。萩は城下町らしく、升目状に小道が続き、所々が鈎状になっています。土塀が連なり、屋敷内から顔を覗かせる夏ミカンの花。甘い香りが町全体に漂っていて気持ちがいい。木戸孝之の生家の庭にも夏ミカンの木があり、花が満開です。街中の小さな公園のようなスペースにも、夏ミカンが植えられていました。この木には白い花が鈴なりです。また萩には、市内を西廻り、東廻りの循環バスが走っていて、どこまで乗っても100円均一。観光名所にバス停が設けられているので、観光客にとっては重宝します。乗ってみると、けっこう地元の人たちの利用も多いようです。

夏ミカン02.jpg夏ミカン03.jpg

 翌朝、早起きして6時くらいに宿を出、昨夕に下見しておいたポイントをまわりました。土塀の上から覗く夏ミカンの白い花を、朝日が照らして輝きます。中には、黄色い実がついた木も。木成りで冬を越し、酸が抜けておいしくなっているに違いありません。ネコが一匹、土塀の屋根の上でひなたぼっこ中。何枚か写真を撮っていると、「なんだよ、うるせぇなぁ」とでも言いたげな視線をこちらに一瞬向けましたが、そのまま目を閉じてしまいました。夏ミカンの花の甘い香りに、寝心地もさぞかしよいことでしょう。

夏ミカン04.jpg

 武家屋敷の夏ミカンとは別に、栽培が多いのは萩から3つ目の駅、大井とのこと。駅から5分ほど歩くと、川に沿って夏ミカンの畑が広がっていました。ちょうど畑で作業中のお父さんがいたので、了解を得て花の写真を撮らせてもらいました。花の甘い香りが、鼻をくすぐってきます。夏ミカンの花に夢中になっていたら、萩焼の店を訪ねる時間がなくなってしまいました。今度はぜひ、器を探しに行ってみたいです。

撮影/'03.5.12

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ブルーベリー [くだものの花]

<新潟県妙高市>ブルーベリー01.jpg 生の果実はやっぱり違いました。ジャムやお菓子などで味は知ってたけど、加工したものよりも生は数倍おいしい。最近はすっかりおなじみになったブルーベリーですが、木に生っているのを見たものは、この時が初めてでした。実の色は黒に近い濃紺色で、ブドウの巨峰などの色に似ています。貧乏性なので、最初、1粒を口の中に放り込んだのですが、「1粒じゃ味がわからないから、こうやって数粒まとめて口に入れるといいよ」と、農園の人に教えてもらい、5、6粒まとめて口の中へ。ホントだ、おいしい!!

ブルーベリー03.jpg 甘味と酸味のバランスがよく、ブドウよりもマイルド。鳥たちもおいしさがわかるのか、ブルーベリーの実を好んで食べるため、収穫時期になると防鳥網を張らなければならないそうです。時々500円硬貨ほどの大きなものも採れるというので、園内をあちこち探しましたが、見つけられませんでした。

ブルーベリー02.jpg

 生のブルーベリーを初体験したのは、長野県との境に位置する新潟県妙高市の妙高高原にあるブルーベリー園(現在は閉鎖してしまったようです)。日本の草分けである長野県信濃町の農園が、栽培を始めたのが1973年。妙高高原のここのブルーベリーは、その信濃町の農園の木を譲り受け、増やしていったものだそうです。日本のブルーベリー栽培の歴史って、まだ浅いんですね。生の果実がなじみないのも無理はないかも。園内にはさまざまな種類のブルーベリーが植えられていて、ブルーベリー狩りが楽しめました。

ブルーベリー05.jpg ブルーベリーはツツジ科で、同じベリーと名がつきますが、バラ科のストロベリーやラズベリーとは分類が異なります。花はスズランに似た白い釣り鐘状で、枝に群がるように咲きます。なかなかに愛らしい。虫がつきにくく、栽培が簡単なことから、庭木や鉢植え用の果樹としても最近、注目を集めているそうです。花の鑑賞用として栽培してみるのもいいかもしれませんね。この花が実を結ぶと淡緑色になり、次第にピンクがかってきて、さらに濃紺色になると食べごろとなります。

ブルーベリー04.jpg ブルーベリー園の一角から、木々の間に妙高山が望めました。高原の涼やかな空気の中、おいしく育っていくブルーベリー。スーパーのフルーツ売場でサクランボのように粒を揃えてパックに詰めた、高価な「よそゆき」ブルーベリーを見かけますが、あれだと1粒ずつ食べちゃいそう。ブルーベリーはやはり、豪快に頬張ってこそ、おいしさがわかるくだものですね。

撮影/'98.5.22

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