イワカガミ [山で出逢った花]
近くの1000mほどの山によく登るのですが、頂上近くでこのイワカガミをよく見かけます。阿賀野市に、5つの峰を持つことからその名がある「五頭山」があります。田中澄江が著した「花の百名山」にも選ばれ、代表的な花として挙げられているのがオオイワカガミ。この五頭山には何度か登っているのですが、今までイワカガミが咲いているところに遭遇したことはありませんでした。今年、隣にそびえる菱ヶ岳に、例年だとヒメシャガが咲く時期ということで登ることにしました。しかし、今年は雪解けが早く、花も早かったようです。
せっかくなので、この菱ヶ岳から五頭山へ縦走することに。多少のアップダウンはあるものの、歩きやすい縦走路です。花があまり咲いてないなと思っていると、ついにイワカガミに遭遇。濃いピンクのイワカガミはよく見るのですが、白は初めてだったので写真に撮りました。白いイワカガミも清楚な感じで美しい。
隣町の五泉市に「菅名岳」・「大蔵山」・「鳴沢峰」という3つの山頂をもつ大きな山塊があります。ここにも頂上近くにイワカガミの群生がありました。前を歩いている人が、突然立ち止まってしゃがみ込み、写真を取り始めたので何だろうと思ったら、イワカガミでした。この花は人気がありますね。似たような花で、イワウチワという花にも出逢いました。イワカガミかと思って撮ったのですが、帰ってから家でパソコンに取り込んで確かめると、イワウチワだったのです。イワウチワもイワウメ科ですが、1本の花茎に淡い紅色の花を1輪付けます。名前は、岩場に咲き、葉の形がうちわに似ていることから。もう少し山野草に詳しいと、登山も楽しくなると思うのですが、まだまだ登るのに必死で余裕がないのが現状です。
撮影/'16.5.14・6.11花の島 [山で出逢った花]
その時登ったのが、日本海に浮かぶ佐渡ヶ島のドンデン山と、そこから金北山への縦走です。花の島ともいわれる佐渡ヶ島ですが、よく知られたトビシマカンゾウやイワユリは、何度も見たことがあります。けれど、何度も訪れているのに、これまでは「花の島」というのがピンとこなかったのです。
アオネバ入口から登山開始。するとすぐさま、先生が足を止め、花の写真を撮り始めます。花の名前を先生から教わり、いっしょに写真を撮って名前をメモしました。もう、この連続です。花の種類が多すぎて、とても覚えきれるものではありません。それでも、サンカヨウ、エチゴキジムシロ、ヤマトグサ、ヒトリシズカ、キクザキイチゲはしっかりと覚えました。花を探しながら登ったので、さほど山登りのキツさは感じなかったです。
この日はドンデン山荘で1泊。さすがに、花の最盛期だけあって、山荘は満員でした。翌日は、ドンデン山荘から佐渡最高峰の金北山への縦走です。ガイドをお願いしたのですが、テニスの錦織選手によく似たイケメン!! 縦走路に向かう途中、シラネアオイの群生地を教えてもらいました。昨日、脇を通ったのに気づかなかったのですが、舗装道路から少し入ると、不自然なくらいシラネアオイが密集して咲いています。人の手で植えたのかと思ったら、自然の群生だとか。
ガイドさんの後に付いてゆっくりしたペースでアップダウンを繰り返し、いくつかのピークを越えながら金北山の山頂を目指します。途中、ふと後ろを振り返ると、先生の姿がありません。しばらくすると、猛ダッシュで先生が追いつきます。どうやら、また花を見つけて写真を撮っていた様子。佐渡が初めてという先生にとって、宝の山なのでしょうね。金北山に近づくとまだ残雪があり、登山道に雪解け水が流れ込んで川のようになっています。そんなところにぽつんとシラネアオイが花を咲かせていました。群生もいいけど、逞しく咲くシラネアオイも素敵です。佐渡ヶ島は、まさに花の島でした。※(上)シラネアオイ (中)サンカヨウ (下・左上から時計回り)エチゴキジムシロ、ヤマトグサ、キクザキイチゲ、ヒトリシズカ
撮影/'14.5.24
ハクサンコザクラ [山で出逢った花]
登山口からブナ林の中をなだらかに木道が続き、山の歩き方を知らないので自然と早歩きになります。黒沢にかかる小さな橋を越えると状況は一変。十二曲がりと呼ばれるつづら折の急登が続きます。ここで東京から来たという年配のご夫婦とそのお姉さんの3人連れに出会いました。「若いんだから、お先にどうぞ」と、道を譲っていただいたのですが、ますますペースが速くなり、途中でへばっていると先ほどの3人に追いつかれ、同じことを何度も繰り返していました。それでもなんとか、登山口から3時間半で、目的の高谷池ヒュッテに無事到着。
管理人さんに話を聞き終わり、せっかくだから山頂まで行ってみるかと思ったものの、高谷池ヒュッテからだと1時間半かかるとのこと。休憩を含めれば往復で3時間、高谷池ヒュッテから下山にまた3時間ほどかかります。夏で日が長いとはいえ、その時はヘッドライトなどの装備も持ってなく、安全を考えて山頂は断念することにしました。
それでも、ヒュッテの少し先にある、池塘が点在する「天狗の庭」まで行ってみることに。途中、7月末だというのに雪渓が残っていて、冷気がひんやり気持ちよかったです。天狗の庭の少し手前で、ピンクの花畑が現れました。ハクサンコザクラです。登山道から離れていたので、アップで見ることはできませんでしたが、「火打山のアイドル」といわれるだけあって、かわいらしい花です。サクラソウ科で、分布は本州中部の多雪地域に限られ、西限は白山、東北限は飯豊山。雪解け後の湿り気のある草地に生えます。池塘の周囲にも白い花の群生が見られましたが、何の花でしょうか。おそらく、ほかにもいろんな高山植物が咲いていたのでしょうが、当時は花にそれほど興味もなく、余裕もありませんでした。今ならきっと、探しながら歩くでしょう。火打山は紅葉の美しさでも知られていて、昨年、新しい管理人の方にお話を伺うと、10月上旬の3日間が最高とのこと。今年はぜひ、紅葉を楽しみながら、山頂まで挑戦してみたいと思います。
撮影/'96.7.30カタクリ [山で出逢った花]
いくつも登山コースがあるのですが、友人から聞いたコースに登ると、突然登山道の両脇にカタクリがびっしり。途中からは登山道にまで進出し、踏まずに歩くのが大変なくらいです。これが1kmほど続くのです。もちろん登山道だけでなく、山の斜面にもずっとカタクリが続きます。花の名山という称号も納得です。カタクリは発芽してから開花までには8年もかかるとか。うつむき加減に咲く愛らしい姿からでしょうか、花言葉は「初恋」。カタクリの名は、球根を割ると片方が栗の実に似ているからとも、古名の傾籠が転訛したものともいわれています。
ヒメサユリ [山で出逢った花]
<新潟県関川村>
ヒメサユリ(姫早百合)──あまり、なじみがない花かもしれません。というのも、ヒメサユリは東北南部の山形、福島と新潟の3県が接する朝日・飯豊山系、吾妻山系、守門浅草岳にしか自生分布していない希少な植物。日本特産のユリで、野生ユリの中では最も早く咲きます。新潟県三条市に「ヒメサユリの小径」という群生地があり、かなり前に一度、訪ねたことがあります。
先日、このヒメサユリに、思いがけず再会しました。新潟県関川村にある光兎山は、高さ966.3mと低い山ながら、歩く距離が長く、後半に急登やロープ場などが続く体力のいる山です。光兎山の名は、中腹に白いウサギの雪形が現れることから。古くから羽黒山伏の修験の山だったと伝えられており、昭和24年まで女人禁制だったそうです。前日まで別の山に登るつもりでいたのですが、以前、山で出会ったお母さんが「光兎山に登ったけど、よかった」と話していたのを思い出し、予定を急遽変更して向かうことにしました。
登山口近くに6台ほどの駐車スペースがあるものの、8時に着いた時はすでにいっぱい。路肩に留めて登り始めました。一人だとどうしてもペースが速くなりがちですが、この日もやはりオーバーペース。前を行く熟年4人連れに追いつくと、最後尾の人が「はーい、急行が通りますよー」と道を譲ってくれました。前半は割と緩やかだったものの、後半は雷峰のアップダウンと頂上直下の急登が足に応えます。ヒメサユリに出逢ったのはそんな時でした。登山道の傍に、勇気づけてくれるように点々と咲いています。茎の高さ40〜60cm、漏斗型の花を茎頂に1〜3個ほど、横向き〜やや下向きに付けます。花色は淡いピンクで、芳香があります。清楚な姿に似合わず、岩場の厳しい条件下でたくましく根付くヒメサユリ。ヤマツツジの濃いオレンジも、折れそうな心を励ましてくれます。
頂上手前の急登でへばっていると、先ほどの道を譲ってくれた4人にあっさり先を行かれてしまいました。やはり、多少ゆっくりでも、自分のペースで登るのが一番なんですね。頂上からの眺望は抜群でしたが、下りもアップダウンが足に応え、足中の筋肉がギブアップ寸前。やっとの思いで下りてきました。「こんな山、もういい」と思いましたが、数日するともう一度登ってみたいと思うから、山って不思議です。ヒメサユリにも、今度は余裕を持って逢いたいものです。撮影/’16.6.4