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アマランサス [作物の花]

<長野県小川村>アマランサス01.jpg アマランサスと聞いて、「何、それ?」という人がほとんどではないでしょうか。カッコいい名前ですが、南米原産の雑穀です。アマランサスを知ったのは通販のサイト。一時期、取り寄せて、ごはんを炊く際にいっしょに混ぜて炊いていました。山形県立川町(現庄内町)で作られたアマランサスだったので、問い合わせてみたのですが、「在庫調整のため、現在は栽培していない」とのこと。それなら、雑穀王国といわれる岩手県なら栽培しているのではと思って調べると、たまたま買ったばかりの雑誌にアマランサスが載っていました。人の背丈よりも高い真っ赤な花にびっくり。これは見にいかなければ。出かけようと思ったものの、岩手はやはり遠いなと、つい億劫になってしまいます。

アマランサス03.jpgアマランサス02.jpg インターネットで検索してみると、お隣の長野県小川村でも栽培していることがわかりました。村おこし事業として、アマランサス栽培に力を入れているそうです。岩手よりも長野の方が近いし、しかも小川村は一度「おやき」の取材で訪れたことがあるので知っています。小川村は、長野市から車で30分ほどの、北アルプスを背に広がる山の幸、野の幸に恵まれたのどかな農村。今では長野の名物として知られているおやきですが、小川村では消えかけていた村の食文化にもう一度光を当てようと、仲間たちでおやきの加工販売を手がける事業を起こしたのです。小川村に、決定!

アマランサス05.jpg

 オリンピック道路から逸れて坂道を上り始めると、さっそく赤いものが見えてきました。そう広くはないけど、アマランサスの畑です。辺りを散策してみると、ぽつんぽつんとアマランサスの畑が点在しています。炎のように赤い花は、のどかな山間の村にはいささか不似合いな気もしますが、南米ペルー原産ということを考えればそれも納得です。

アマランサス07.jpg

 アマランサスはヒユ科ヒユ属の植物の総称で、花を楽しむ観賞用や種子を穀物として食べるために栽培されています。日本へは江戸時代頃に観賞用として伝わりました。種子は栄養価が高く、スーパーグレイン(驚異の穀物)とも呼ばれています。草丈が高く、細長い花穂に多数の赤い小花をつけ、次々と途切れることなく咲かせます。観賞用として栽培されるのもわかりますね。花は大きな花穂が垂れ下がって咲く種類と、花穂が直立する種類があるようです。小川村で見たのは、直立する種類でした。知らない野菜や穀物って、まだまだありそうです。

撮影/'09.9.5

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ベニバナ [作物の花]

<山形県白鷹町>ベニバナ01.jpg ♪勝ってうれしいはないちもんめ

負けてくやしい…。この子ども遊びの「はないちもんめ」とは、ベニバナのことだそうです。摘んだベニバナの花びらは水洗いで揉みながら黄色の色素を洗い流した後、日陰で発酵させます。発酵したら花びらを臼に入れてつき、団子状に丸めてから煎餅状に潰します。これを天日干ししたものが「紅餅」です。この紅餅1もめん(3.75)には、ベニバナが約300輪必要とされ、とても貴重なものでした。

ベニバナ03.jpgベニバナ04.jpg 以前、ベニバナが栽培されている、山形市の高瀬地区を訪ねたことがありました。高瀬はアニメ映画「おもひでぽろぽろ」の舞台にもなったところで、ベニバナを摘みに山形にやってきた主人公を迎えに来た青年が、ベニバナについて「名前ばっかり有名でね。とうの昔に廃れた特産品ですから」と話すシーンがありました。昔を知っている人からすると、栽培面積はぐっと減っているのでしょう。かつて置賜領内の半分以上を生産する、領内最大の生産地だったという白鷹町を訪ねてみました。白鷹町ではベニバナを復活させようと、1994年に8名の有志で「白鷹紅の花を咲かせる会」を発足。今では栽培面積が約10倍まで拡大しているそうです。

ベニバナ02.jpg ベニバナはキク科で、7月になるとアザミによく似た花を咲かせます。ベニバナにはトゲがあるため、露にぬれてトゲが柔らかくなる早朝に摘むと聞いていたので、朝早く出かけました。白鷹町に着いてすぐに、地元のお母さんが花を摘んでいる畑を発見。声をかけて畑に入らせてもらいました。畝を歩くたびにジーンズの厚い生地越しでも、チクチクとトゲが当たってきます。なるほど、ベニバナを摘むのは大変です。ベニバナの花色は紅(ベニ)ではなく、オレンジ色に近い黄色。花のてっぺんに一点紅が差したときが摘み頃とか。次々と咲くから、毎朝摘まなければならないそうです。

ベニバナ05.jpg 少し高台に登った場所にあった畑では、お母さんが一人で黙々とベニバナを摘んでいました。眼下には街が望め、奥には山並みが連なります。その後、何カ所か畑を見つけましたが、時間が経過して遅くなったためか、畑で花を摘んでいる人は誰も見かけませんでした。やはり、朝早くが勝負のようです。以前、ベニバナで染めた着物を見たことがあるのですが、自然の色合いというか、やわらかな淡い紅色がとても美しかったのを覚えています。機会があれば、紅餅をつくる様子も見てみたいですね。

撮影/'12.7.21

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ジョチュウギク [作物の花]

<広島県尾道市>
ジョチュウギク01.jpg 今は、窓を締め切ってエアコンを利かせるから、夏の夜に蚊取り線香を焚くこともなくなりました。昔の夏は、今より夏らしかった気がします。夕方になると渦を巻いた緑色の蚊取り線香に火をつけ、寝るときには蚊帳を吊ったりして。蚊帳なんて、知らない人も多いのでしょうね。蚊取り線香の箱には、原料の「ジョチュウギク」が描かれていた気がします。今はみんな輸入になっているようですが、わずかに瀬戸内海の島で栽培されていると何かで読んだ記憶があり、調べるとそれが広島県の因島だとわかりました。


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 因島はかつてジョチュウギクの日本一の栽培地であり、満開になると島中が一面白く染まったといいます。でも今は、観光用に細々とつくられているだけとか。ちょうど、しまなみ海道が全通したばかりの年の5月、そのジョチュウギクの畑を探しに瀬戸内海に向かいました。因島フラワーセンターで訊くと、重井というところで栽培されているとのこと。「少し行くと右に入る小道があるから、その先にいっぱい咲いてるよ」。途中、地元の方が親切に教えてくれます。逸る気持ちを抑えつつ、教えられた小道を進むと、前方の段々畑に風に揺れる白い可憐な花。眼下には重井西港。絵画のような風景が広がっていました。

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 ジョチュウギクの花はマーガレットに似て可憐。ジョチュウギクのミツや花粉には殺虫成分はなく、ミツバチなどの受粉を媒介してくれる虫は心配なく留まれるのだとか。殺虫成分があるのは花の根元の胚珠と呼ばれる膨らんだ部分。大切な雌しべや雄しべを食べられないよう、これらを食べてしまう幼虫などを寄せつけないようにしているのだとか。うまくできているものです。

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 唯一の場所だからか、すでに花を観賞している人たちが何人かいて、中にはのんびりと絵を描いている人たちも。段々畑の上の方まで行き、写真を撮っていると、「ここからの方がいいアングルで撮れるよ」と、教えてくれる人がいました。港がジョチュウギク越しに望め、確かにベストポジション!! 教えてくれたのは、因島在住の写真家さん。しガスがかかって遠くの島々は霞んでいたけど、初夏の青い海と空にジョチュウギクの白が映えて、きれいな花景色を見ることができました。写真家さんの個展がちょうど開催中で、島全体がジョチュウギクの白い花で覆われていた頃の写真も堪能。できれば直に、その美しい風景を見たかったなぁ。

撮影/'99.5.15

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綿 [作物の花]

<兵庫県西脇市>ワタ01.jpg 「7月には花が咲きますから、ぜひおいでください。花が終わった後の、コットンボールもかわいいですよ」。電話のお相手は、「綿の種を育てよう会」の会長さん。明治の中頃まで国内自給率100%だった綿ですが、昭和20年代以降、海外産の安い綿が輸入されるようになると、国内の綿栽培はほぼ0%になってしまいました。今でも綿を栽培しているところはあるんだろうかと、ホームページで検索していてこの会のことを知り、問い合わせをしてみたのです。同会は、兵庫県西脇市の播州織物会社の社長さんが「全国生涯学習まちづくり研究会兵庫支部」のメンバーとともに結成。播州織の町西脇市を綿で盛り上げようと、地元農家の協力を得て綿の栽培をおこなっているネットワークです。会でも10aほどの畑で栽培しているとのこと。

ワタ03.jpgワタ04.jpgワタ05.jpgワタ06.jpg 会長さんの電話で気になる言葉がありました。コットンボール? 本で調べ、なるほどと思いました。綿は実がはじけると、白い繊維があふれ出てきます。この綿の実のことをコットンボール(綿玉)といい、これを紡いで綿にするわけです。肌着、シャツ、ジーンズ、タオル、綿棒など、身近なところにいろいろ使われているのに、知らないものです。勉強になりました。

 後日、会の方から畑の場所をお聞きして、西脇市へ。西脇市に入ってすぐ、車が行き交うバイパスのすぐ脇に、会の栽培田がありました。栽培田の中には、黄や赤、白などの花が咲いており、それぞれオーナーの名札がかかっています。日本綿、アメリカ綿、インド綿などの種類によって花が違うようですが、どれがどれやら。開花の時期も多少違うみたいで、訪れたときはちょうど鮮やかな黄色の花が盛りでした。綿は7月から8月にかけて美しい花を咲かせます。一日花で、朝咲いた花は翌日には変色し、3日目には落花。10月頃になると実がはじけて真っ白なコットンボールとなります。
ワタ02.jpg
 新潟県新発田市で、農家の奥さんが趣味で綿を栽培しているというので、こちらの畑も見せていただきました。家の裏の畑に、アスパラガスやピーマン、ゴーヤーなどといっしょに綿も植えられています。まだ花も咲いていましたが、よく見ると、すでに実がいくつかできていました。わずかに白い綿のようなものが顔を覗かせているものも。昨年収穫したコットンボールと、その綿を使った工芸作品も見せていただきました。コットンボールは、ふわふわで気持ちよかったです。

撮影/'01.8.25

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ホップ [作物の花]

<秋田県横手市>ホップ01.jpg ブームは下火になった感がありますが、規制緩和によって全国各地に誕生した個性的なブルワリー。いつだったか、地ビールの話をしてるとき、誰かが「地ビールっていうけど、地のものは水だけなんだよね」と、言っていました。言われてみれば確かに、麦もホップもほとんどが輸入だし、技術もドイツやベルギーから人を呼んで造っているところがほとんど。しかし、最近では原料に地元産のものを使って、個性的なビールを生産しているブルワリーもあるようです。

ホップ02.jpg ビールの独特の苦味や香りづけに使われるホップは、すべてが外国からの輸入なのだろうと思っていたら、北海道の上富良野町を車で走っている際に、偶然見つけたことがあります。日本国内でも栽培されているんですね。中でも品質の良さで知られているのが、秋田県の横手市大雄地区です。大雄地区のホップ栽培は、1971年に大手ビール会社との契約栽培により、減反作物としてスタート。その後年々栽培面積が増え、20072010年度にはホップ生産量4年連続日本一となっています。

ホップ03.jpg 大雄地区に着くとすぐに、田んぼの真ん中にぽつんとあるホップ畑を発見。ホップの畑を遠くから眺めると、緑の葉で覆われた大きな倉庫のようです。近づいてみると、蔓が上に伸び、かなりの高さになっています。7、8mはあるでしょうか。TVでNGシーンを紹介する番組があり、天気予報士がこのホップの畑で竹馬の大きなものに乗って中継をしていて、いきなり落ちそうなり、張ったワイヤーにしがみつくシーンがありました。笑ってしまったけど、実際にこうして立ってみるとかなり高くて驚きます。

ホップ04.jpgホップ05.jpg 蔓にはホップの毬花が鈴なり。ホップはクワ科の蔓性植物で、雄雌異株です。ビールの醸造に使われるのは、よく成熟した雌花のみ。日本ではこの雌株しか栽培されていないそうです。雌花は緑色の松かさ状になるので「毬花(まりばな)」と呼ばれています。雄株はというと、育種の際に使われるだけ。ミツバチの雄も同じような立場なんですが、つくづく人間でよかったと思います。収穫されたホップは、地区内の乾燥場に運ばれ、機械で蔓から花だけを取り、約20時間乾燥したあとビール会社へ出荷されます。この畑のホップが、どの銘柄のビールに使われているのか考えると楽しくなりますね。大雄地区で麦も作って、純粋地ビールなんてつくったら、話題になるかもしれませんね。でも、高くなっちゃうかな。

撮影/'00.7.28

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アオバナ [作物の花]

<滋賀県草津市>アオバナ01.jpg 伝統工芸には、それを支える材料や道具があるからこそ成り立つ、というものが少なくありません。古くから友禅染や絞り染などの下絵描きに利用されてきた「アオバナ」もそんな一つ。漢字で書けば「青花」。姿形はおなじみのツユクサと同じですが、大きさが全然違います。アオバナは野に自生するツユクサの変種で、花びらが大型で美しい青色をしています。大帽子花とも呼ばれ、この花びらから取り出した染料が水洗いで簡単に落ちることから、今でも需要が絶えないそうです。

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 このアオバナを今も栽培している農家がわずかに残るというのが、琵琶湖のほとりに位置する草津市です。新潟から向かう途中、富山辺りで本当にバケツをひっくり返したような豪雨に見舞われました。ワイパーを最速にしても雨が瞬く間にフロントガラスを覆い、視界もほとんど利きません。ところが、北陸から滋賀県の方に入ると嘘のように上がり、草津市に着くと夏の青空が広がっていました。異常気象なのか、最近は局地的豪雨が各地で発生しますが、地球は大丈夫なのかぁと、本当に心配になってきます。

アオバナ02.jpgアオバナ03.jpg 草津市に着いてアオバナの畑を探していると、幸先よくおばあちゃんが小さな畑でアオバナを摘んでいました。「昔は、一面アオバナの畑だった」というから、この辺ではどこでも見られたのでしょう。近くにもアオバナの畑があるというので行ってみました。こちらは少し大きな畑で、支柱を立てて栽培しています。もう摘み終えたのか、畑には誰もいませんでした。

アオバナ05.jpg 1mほどに成長した一つの株に、200以上の花を毎朝咲かせるアオバナ。夏の日射しを透かした花は、青色がキラキラとしてきれいでした。けれど暑い、とにかく暑い。朝の7時になるかならないかという時間なのに、太陽はもうだいぶ高い位置にあって、日差しが肌を刺すように痛いんです。摘み取るのは花びらのみ。幾株あるのかわからないけど、これだけの花びらを花が萎んでしまう前に摘み取らなければならないのだから、いかに大変な作業かわかります。アオバナには「地獄花」という別名があるそうですが、こうした暑さの中の摘み取りがキツいからかもしれません。最近は、アオバナの身体への効能や可能性について研究され、さまざまな食品化が進められているようです。だからでしょうか、当時は風前の灯だった畑ですが、ホームページに広いアオバナの畑の写真を見つけました。もっともっと増えるといいですね。

撮影/’98.8.5

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ラベンダー [作物の花]

<北海道中富良野町・新潟県新潟市>ラベンダー01.jpg 大好きだという人は多いはず。数あるハーブの中でも、香りの女王と呼ばれるのがラベンダーです。夏になるとTVや雑誌などで、北海道の紫色の花景色が紹介されます。最近、あちこちでラベンダー園を開いて、観光客を呼ぼうとしていますが、広々とした丘、雄大な山々が背景に望め、一面が紫色に染まる畑、清々しい香り…。富良野のラベンダー畑は、やはり他を圧倒しています。

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 このラベンダーを一躍有名にしたのが、中富良野の「ファーム富田」。年間100万人もの人が足を運ぶのだとか。中富良野町内、上富良野、美瑛などにも知られたラベンダー畑がいくつかありますが、やはりファーム富田を訪れる観光客の数が圧倒的に多いようです。観光客に人気のファーム富田のラベンダーですが、実は香料を採るために栽培されています。その最も美しい一瞬にしか採れない香りのエッセンス。それが、ラベンターオイルです。

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 朝の6時だというのに、開放されている畑はもう観光客でごった返しています。さすが富良野のラベンダー。人の多さにうんざりして、中富良野町内を巡っていると、ラーメン店の敷地の一角だとか坂道の途中とか、そこかしこにラベンダーを見ることができました。誰もいない丘の上のラベンダー畑を発見。まだ蕾が付き始めたくらいで、畑の色が淡いけど、ラベンダー越しに街、田んぼや畑、遠くの山々などが望め、ただぼんやりと眺めていると、心がスーッと落ち着いてきます。なんとも魅力的で不思議な花です。

ラベンダー04.jpg ラベンダーは草花ではなく、3040年生きる常緑の潅木。茎の先に小さな花が穂になって咲きます。1本の花付の中に親と子と孫がいて、親花は下から上へと順番に咲き、この親花が咲き終わると今度は子が、そして孫花が下から上へと咲いていくと聞きました。子の世代が上まで咲いたぐらいが、オイルを採るには最適だとか。

ラベンダー03.jpg ラベンダーは人だけでなく、ミツバチをも魅了するようです。散歩コースの途中にある個人の畑の一角にも、ラベンダーが5株ほど植えられています。最初見つけたときはまだ蕾の段階でしたが、1週間ほどして開花が進んだ頃、前を通りかかると花が開いて、ミツバチが飛びまわっているではありませんか。強い風が吹く日で、ラベンダーの花を揺らしていましたが、ミツバチたちは懸命に風に耐えながら、咲いた花に顔を突っ込んでミツや花粉を集めていました。香りとともに、紫色も心を癒してくれる花です。

撮影/'99.7.16'11.6.22

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ゴマ [作物の花]

<埼玉県皆野町>ゴマ01.jpg

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 「ひらけ〜ッ、ゴマ!!」。山賊の頭が呪文を唱えると、あーら不思議、大きな岩がゴゴゴッと開くのでした……。そう、ご存じアラビアンナイト、「アリ・ババと40人の盗賊の物語」の一場面です。両手に荷物を抱え、玄関の前で真似して「ひらけ〜ッ、ゴマ!!」と叫べば……、何も変わらない。現実は甘くはないのです。でも、どうしてゴマなのでしょうか。ゴマは成熟後に乾燥させると、さやが割れて中の種が弾けます。このことから、パッと勢いよく開く様子を表現する、当時の慣用句だったといわれています。また、栄養価の高いゴマに、神聖な力があると信じられていたからかもしれません。

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 私たちの食生活にも身近なゴマ。かつては日本のそこかしこでつくられていたようですが、今はほとんどが輸入とか。それでも、どこかにないかと野菜の本をめくっていると、容器に「皆野町産」と書かれたゴマの写真が載っていました。古そうな写真だったので、もうつくられていないかもしれないと思いながらも、皆野町の役場に問い合わせると、対応してくれた方の隣の席の方の家でゴマをつくっているというではありませんか。なんというラッキー!! さっそく出かけることにしました。

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 草取りに精を出していた農家のお母さんがいたので、ゴマの畑の場所を訊ねると、なんとお母さんが草取りをしているそこがゴマの畑。でも、花はおろか、ようやく双葉が土から顔を覗かせたばかり。ゴマは乾燥には強いけど雨には弱く、ここのところ雨が多くて、なかなか芽が出なかったのだそうです。「あと1カ月もすれば、花が咲く」とのこと。ゴマには種類がありますが、お母さんがつくっているのは香りのいい金ゴマだそうです。

 1カ月後、再び皆野町を訪ねてみました。ゴマは人の背丈ほどに成長。筒状の淡いピンクの花が、葉の間に覗いています。花びらの先は5つに裂け、唇のような形。ミツバチが盛んに筒状の花の中にもぐり込んでいます。ミツを吸っているんでしょうか。花は下から上へ順に咲き、下の方ではもう実をつけ始めていました。

 ゴマの花を撮影した後、関東地方は集中豪雨で河川の氾濫が相次ぎました。荒川のすぐ脇にあった皆野町のあのゴマ畑。少し高くはなっていましたが、大丈夫だったでしょうか。異常気象のせいか、このところ各地で記録的な豪雨を記録し、甚大な被害を及ぼしています。雨よ降り止めーッ、ゴマ。そんな呪文が、使えるといいのですけど。

撮影/’98.8.12

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亜麻 [作物の花]

<北海道当別町>亜麻01.jpg

亜麻02.jpg  ♪亜麻色の長い髪を風がやさしく包む〜。島谷ひとみさんが歌って(もとはヴィレッジシンガーズというグループ)ヒットした曲「亜麻色の髪の乙女」。あまり歌詞の意味も考えずに歌っていましたが、この「亜麻」とはどんな植物なのでしょうか。亜麻はアマ科で、一年草と宿根草があり、繊維から糸・織物をつくり、種から亜麻仁油を採ります。また亜麻色とは亜麻の糸の色で、灰色がかった薄茶色のこと。亜麻色の髪は、金髪(ブロンド)とは少し異なり、薄い茶色の髪色を指すようです。

 

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 亜麻は中央アジアの高地が原産とされ、現在はフランス北部やベルギー、ロシアなどの亜寒帯地域で栽培され、国内では北海道のみ栽培されています。北海道では明治時代に導入されて急速に広がり、道内に85カ所もの亜麻工場ができたそうです。昭和40年頃までは道内各地で亜麻畑が見られたようですが、化学繊維の普及で姿を消してしまいました。しかし平成14年に、当別町で亜麻仁油の採取のために栽培が復活。花が咲く頃に合わせて、祭りも開催されているようなので、訪ねてみることにしました。

 新潟からフェリーに乗り小樽へ、小樽からは列車で当別へと向かいます。ちょうど「亜麻まつりin当別」の開催日で、JR石狩当別駅から会場の旧東裏小学校まで送迎バスが出ていたのでラッキーでした。会場から畑へも送迎バスがあり、さっそく乗り込んで向かいます。畑は何カ所か点在するとのことですが、案内されたのはその中でも広い畑のようです。周囲は田んぼや畑ばかりで目印になるようなものもなく、送迎バスに乗せてもらって正解でした。亜麻は連作障害があるため、畑の場所も毎年変わるそうです。

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 淡いブルーの可憐な花と緑の葉が、風に揺れてなんとも涼しげです。茎の高さは60cmほど。花は直径約2cmで、淡いブルーもしくは紫といった感じの花色です。自然の色は微妙ですね。もちろん、畑の亜麻は観光用ではなく、亜麻仁油を採るためのもの。訪れた人たちは、畑の周りの畔をたどって、花を鑑賞したり写真を撮ったりしています。北海道の人たちは、この広々とした景色は見慣れているでしょうが、他県から来るともう雄大の一言。かなりの時間、畑で花を眺めていましたが、飽きなかったです。

 祭りの開催日とあって、この日はかなりの人が訪れていました。亜麻の花は、朝に咲いて午前中で散ってしまうとのこと。花を見るなら、ぜひ午前中に!! 


撮影/12.7.15

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