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ミツマタ [作物の花]

<岡山県真庭市>ミツマタ01.jpg 紙幣が刷新されることがあります。前回は、2004111日、20年ぶりに新紙幣に変わりました。一万円札の福沢諭吉は続投でしたが、五千円札が樋口一葉、千円札が野口英世に。新しい紙幣を発行する一番の目的は偽造防止で、コンピュータの高性能化や低価格化にともない、紙幣偽造に使われるカラースキャナーやコピー機の精度も向上。偽札事件が急増したから、新紙幣の発行なったそうです。

ミツマタ02.jpg 日本の紙幣の偽造防止技術は世界最高水準にあるそうですが、紙の品質も群を抜いています。高額紙幣用紙の原料は、ミツマタを中心にマニラ麻、木綿、ワラなどの繊維をミックス。ミツマタで漉いた和紙は、破れにくく、変色しない、虫がつかないなどの特長があります。ちなみに、前一万円紙幣1枚の製造原価は20円ほどだそうですが、新しい紙幣は手が込んでいる分、それよりもコストがかかっていそうです。単価はいくらくらいなんでしょうか。

ミツマタ03.jpg 岡山県の県北は、このミツマタの産地の一つで、山の斜面などを利用して栽培されています。中でも、財務省印刷局に納めるミツマタを、もっとも多く栽培しているのが真庭市(旧久世町)です。栽培の中心は山あいの樫西地区で、向かうとさっそく道路脇の山の斜面に黄色の花をつけたミツマタの畑を発見しました。ミツマタはジンチョウゲ科の落葉低木で、名の由来は枝が3本に分かれて出ることから。葉が出る前に、枝先に筒状の花が蜂の巣状に集まって咲きます。花の内側は黄色、外側は白い絹毛で覆われていて、遠目で見ると枝先に黄色いポンポンをちょこんと乗せた感じ。彩りの少ない早春の山里に、灯りを点しているかのようです。

ミツマタ04.jpgミツマタ05.jpg 周辺をうろうろ散策していると、山の斜面にかなり広く栽培している畑を見つけました。とはいえ、道路と畑の間には棚田があり、細い畦道をバランスを取りながら歩かなければならず、近づくのも一苦労。この辺りは山が迫っているため、空がとても狭く、圧迫感を感じます。近くの集落の片隅にミツマタの畑を見つけたとき、一瞬、雲間から日が差し、ミツマタの花が金色に輝き出しました。なかなかきれいです。

 樫西地区の和紙工房には、ミツマタでしょうか、樹皮が干してありました。このミツマタの樹皮も、やがて高額紙幣になるのかもしれません。「金は天下の回りもの」といいますが、久世のミツマタでつくられたお札が、いつかは回ってきてほしいものです。できれば、福沢諭吉さんで。

撮影/'00.4.21

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和ガラシ [作物の花]

<山形県鶴岡市>no-title 「カラシを練るときはぬるま湯で」。飲食店でアルバイトをした時に教わりました。ぬるま湯で練ると、酵素反応が促進され、カラシが早く辛くなるというのです。しかし、あのツーンと鼻にくるのがダメで、もっぱら手をめいっぱい伸ばして器を顔から遠ざけ、顔をそむけながら練っていました。みんなの呆れたような視線を浴びながら…。

和ガラシ03.jpg カラシを栽培しているところがないか探していたら、雑誌に和ガラシの種子の収穫の様子が載っていました。場所は月山の麓、山形県鶴岡市羽黒町。「月山の自然を舞台に、何よりも安全な食べ物を作り続けたい」と、有機栽培を志す近在の農家が共同で拓いた農場の和ガラシの畑です。連作障害を避けるための輪作作物として植え、農作業のできない冬に、特産の民田ナスのカラシ漬けをつくるのです。

和ガラシ02.jpg 農場の代表の方に連絡を取り、和ガラシは花を咲かせるのか訊ねると、黄色の菜の花が咲くといいます。なるほど、カラシ菜ということか。花どきの畑を見せていただく許可をもらい、花の咲く時期と畑の場所を教えていただいて、出かけてみました。場所はすぐにわかったのですが、この日はあいにくの天気。カラシ菜の花は咲いていましたが、濃い霧に包まれ、周囲がどんな景色なのかわかりません。残念だけど、自然のことだから仕方ない。このまま帰るのもしゃくです。せっかく来たのだからと、農場の事務所へ。突然にもかかわらず、代表の方がお相手してくれました。カラシ菜の畑から月山が見えるか訊ねると、「月山ねぇ、農家は下しか見ないから」と、苦笑。「くっきりと見えるのは年にそうないんじゃないかな」といいます。

和ガラシ04.jpg和ガラシ05.jpg ならばと、次の日にもう一度、カラシ菜の畑を訪ねてみました。前日、霧で周囲の景色が何もわからなかったのが嘘のように、朝からすっきりと晴れ渡り、正面に月山の雄大な姿が望めます。振り返ると、うっすらとですが鳥海山の姿も。そして、眼下には鶴岡の街。カラシ菜畑の向こうはアスパラガスの畑で、まだ朝の5時過ぎだというのに、農家の方々が収穫に余念がありません。時折、お母さんたちの笑い声が響いてきます。こんなステキなところで、和ガラシは栽培されていたんですね。和ガラシは、大人の背よりも高く茎を伸ばし、カブやハクサイと同じ黄色い十字花を咲かせます。月山がくっきり見えるなんて滅多にないチャンス。もちろん、月山を入れてカラシ菜の花を写真に収めました。

撮影/'00.6.3

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オオムギ [作物の花]

<京都府亀岡市>オオムギ01.jpg この夏も暑かったぁ。迷走台風あり、○○年に一度の豪雨あり、ちょっとおかしな夏でもありました。暑さでカラカラに乾いた喉を潤してくれたのがムギ茶やビールです。ムギ茶、ビールの原料はオオムギ。オオムギは中央アジア原産でイネ科の穀物。ムギ茶には六条オオムギ、ビールには二条オオムギが使われます。ビールの原料にするのはオオムギを発芽させた麦芽。ちなみに、大びん1本のビールをつくるためには、オオムギ約100gが必要だそうです。

オオムギ02.jpg 現在、日本ではその約8割が輸入麦芽だとか。ということは、国内産も2割ほどあるということです。テレビだったか雑誌だったか忘れましたが、京都府亀岡市でオオムギが栽培されているのを知りました。市役所に問い合わせると、作付場所を記した地図や写真まで添え、親切ていねいに教えていただきました。亀岡では、大手ビール会社との契約 (100)で、アサカゴールドという二条オオムギを栽培しているそうです。

オオムギ03.jpgオオムギ04.jpg 京都駅から山陰本線で亀岡駅へ。駅を出ると多くの通勤客が左右に散っていきます。そうか、今日はウィークデーか。通勤というものから遠ざかって久しいため、なんだか妙な感覚です。通勤客らと分かれ、一人、駅にほど近い踏み切りを渡って駅裏の方に出ます。そこには、田んぼが広がっていました。いや、新潟で見慣れているので一面の田んぼかと思いましたが、ムギ畑のようです。風が強く、穂先が激しく揺れています。しばらく畑や風景を眺めていると、雲が切れ、日が差し始めました。さっきまで雨も落ちていたのに、運が向いてきたようです。桂川を渡って保津町を抜けると、一面にムギ畑が広がっていました。どうやら花は終わったようで、穂先が赤く色づき始めています。これはこれで美しい風景なのですが、目的はオオムギの花です。いつの間にか雲が遠ざかり、空がすっきり晴れ渡ってきました。

オオムギ05.jpg しばらく、ムギ畑でヒバリのさえずりなどを聞きながら、ボーッとしていました。花が終わってしまったならしょうがない、あきらめて帰ることに。駅へと向かう途中、一角の畑が目に止まりました。近づいてみると、なんと花が咲いています。やはり、運が向いてきたようです。近づいてみると、白い葯をつけた雄しべが日差しを受けて、キラキラ輝いているように見えます。花が終わってしばらくすると、収穫時期です。ここのオオムギを原料にしたビール、皆さんも飲んでいるかもしれませんね。

撮影/'00.5.11

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アイ [作物の花]

<徳島県上板町>アイ01.jpgアイ03.jpg 老舗の紺屋を取材した際、アイ()についてご主人が「太陽の光に負けないように、植物自体が色素を持つようになります。同じ葉から濃い色素が得られた方がいいわけで、暖かい地方に軍配が上がる。阿波アイが良質とされるのはそのためなんです」と言っていました。ならばと、アイの花を見に、徳島を訪れることに。徳島のアイはよく耳にするので、畑も簡単に探せるだろうと思っていたのですが、ある町に問い合わせると「うちの町では作っていません」という返答。それでも根気よく探すと、徳島市役所から一人のアイ師を紹介していただきました。

アイ02.jpg
 最初に連絡を取ったときは、まだ2回目の葉を刈っているところで、花が咲くのはまだ先だったのですが、間近になってこちらが忙しくなり、電話するのを怠っていると、「もう咲いている」といいます。何事もタイミングというのは難しいものです。逃してしまうと、また1年後まで待たなければなりません。急いで出かけることにしました。 徳島に着くと予想外のどしゃ降り。小降りになったところでアイ師の方の家にお邪魔し、アイの話を伺いました。畑を見せてもらおうとお願いすると、ここの花はもう遅いからと、同じくアイを栽培している上板町のアイ師の方を紹介していただきました。すぐに向かうと、快く撮影を承諾していただき、アイ師さんの家のすぐ隣に広がるアイの畑を見せてもらうことに。どんよりした曇り空でしたが、激しい雨だった朝のことを考えると、雨が上がっただけでも良しとしなくては。

アイ06.jpgアイ05.jpg

 アイはタデ科の1年草で、3月に種をまき、苗が20cmほどに成長したら定植して、7・8月に刈り取ります。葉の部分を天日乾燥し、アイ師によって3カ月かけて発酵させたものが「すくも」と呼ばれるもので、アイ染めの原料になります。秋、濃いピンクの小花をつけますが、アイ師の方の話では本来は白なのだけど、変種の濃いピンクの方が強く、濃いピンクの花が多くなっているそうです。見せていただいた畑も、一部白い花も見られましたが、ほとんど濃いピンク。まだ蕾が多く、花はこれからというところでした。

 近所の方でしょうか、了解を得てアイの花を摘んでいるという女性がいました。押し花にして栞をつくり、人にあげているのだとか。ステキな趣味ですね。日本人の心に深く根ざしたアイ。化学染料全盛の今、こうした自然の素材がまた少し見直されているのは、うれしいことです。

撮影/'01.10.28

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八重ザクラ [作物の花]

<神奈川県秦野市>八重ザクラ01.jpg 誰もが開花を心待ちにするサクラ。サクラは主に北半球に分布していて、日本には6系統の原種の流れをくむ300以上の品種があります。これらは、より美しいサクラが見たいと、交配を重ねて生み出したもので、花の重ね、色、枝ぶりなど、優美な特徴をもつ多彩な品種が揃っています。ソメイヨシノは今や全国の約8割を占めるサクラの代名詞的存在ですが、そのほかにも薄緑のギョイコウ、八重咲きのショウゲツ、花色の濃いベニシダレなど、特徴ある美しいサクラもたくさんあります。

八重ザクラ05.jpg八重ザクラ03.jpg 花を愛でるソメイヨシノの名所は全国各地にありますが、花びらそのものが商品になるサクラがあるのをご存じでしょうか。婚礼の席で出されるサクラ湯やあんぱんの上に乗っている塩漬けのサクラです。この塩漬けのサクラの原料となるのは「関山」という品種の大輪八重のサクラで、ガクを除いた花全体を塩と梅酢で漬け込んでつくります。このサクラ漬け生産の、全国シェア7〜8割を占めるのが神奈川県秦野市の千村地区です。どんなサクラなのか見たくて、出かけてみました。秦野に着き、この辺かなとあてずっぽで入り組んだ道を進むと、濃いピンクの八重ザクラが道に沿って数本並んでいました。勘が冴えています。

八重ザクラ02.jpg 奥の方でなにやら、木に上って花を摘んでいるお父さんを発見。なんだか花咲じいさんに見えなくもないですね。「この木がこの辺で一番濃い色なんだよ」と、お父さんは自慢げに話します。確かに、同じように見えたサクラの花も、白っぽいもの、薄いピンク、濃いピンクがあります。ピンクが濃いものほど高値で買ってもらえるのだとか。花を摘みながら、お父さんはいろいろと話を聞かせてくれました。360度ぐるりと大きく枝を広げた幹の真下にいき、見上げてみました。ピンクの花が降り注いでくるかのようです。樹齢どのくらいなんでしょうか、立派なサクラの木です。

八重ザクラ04.jpg 住宅地を抜けると、正面に丹沢の山々を望む開けた場所に出ました。小道の先に、柵で囲まれた八重ザクラの畑があります。自転車で追い抜いていくおじさんに挨拶すると、「きれいでしょう。お金のなる木」と、サクラを指差して笑います。どうやら、八重ザクラの畑の持ち主のようです。この週末が摘み頃で、親戚や近くの中学生、高校生をアルバイトで雇って一気に摘むのだとか。にぎやかな花摘みになることでしょう。美しいから鑑賞にもいいし、お金にもなるなら、一本欲しいものです。
撮影/'00.4.22

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タバコ [作物の花]

<岩手県一関市・新潟県妙高市>タバコ01.jpg

タバコ02.jpg

 キセルをご存じでしょうか。刻みたばこを吸う道具で、昔、祖父が囲炉裏の前に座り、キセルでタバコをうまそうに燻らせていたのを思い出します。かつてキセルの一大産地だった新潟県燕市で、キセル職人の方を取材したことがありました。90歳を過ぎてもなお現役で、これまでつくった一番の自信作を訊ねると、「これからつくる作品じゃないでしょうか」と、意欲満々でした。何事にも前向きというのが、若さの秘訣のようです。

タバコ03.jpg 喫煙の場所がどんどんなくなり、肩身の狭い愛煙家ですが、以前は周辺でもかなり見られたタバコ畑も、ふと気づくと最近は見なくなりました。やはりタバコの消費量もぐっと減っているのでしょうね。ナス科のタバコは南米ボリビアの高地が原産とされ、太い茎を伸ばして卵形の大きな厚い葉をつけます。葉は大きいもので長さが約70cm、幅が約30cm。この葉を乾燥させて、加工したものが紙巻たばこや葉巻などです。タバコの栽培には、「心止め」という作業があります。タバコは背の高い茎のてっぺんに淡い紅色の花を総状につけるのですが、葉に十分な栄養を行き渡らせるために、咲いた花を摘み取ってしまいます。だから、花を見ることができるのは、ほんのわずかな時間なのです。

タバコ05.jpg 岩手県一関市千厩町一帯は、全国有数の葉タバコの生産地として知られていました。千厩には仙台地方専売局千厩出張所があり、その敷地に隣接して「たばこ神社」が建てられたほどです。けれど、喫煙者の減少で葉タバコ生産が激減。タバコ畑も少なくなってしまいました。千厩を訪ねたときは、探し回ったものの、ほとんどの畑が心止めをした後。それでも1カ所だけ、まだ花を咲かせていた畑を見つけることができました。

タバコ04.jpg 新潟県妙高市の大鹿地区も、約350年前に越後で最初に栽培を始めた歴史ある葉タバコの産地です。当時の高田藩がタバコの改良・増産を図り、幕府に献上して以来、その名が全国に広まりました。高級葉タバコの産地として知られていましたが、昭和40年代から葉タバコ生産農家が減少し、10年ほど前についに大鹿地区からタバコ畑が姿を消してしまったそうです。訪れたのはもう20年近く前ですが、このときはまだ、かなりの広さのタバコ畑が残っていた気がします。タバコ畑といっしょに日本百名山の一座、妙高山の雄姿が望めたのが印象的でした。タバコ畑はこれから、ますます貴重になるかもしれません。

撮影/'97.6.30'00.7.7

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クロッカス [作物の花]

<新潟県村上市>
クロッカス01.jpg 透明な容器に水を入れ、球根を乗せて、根が伸びる様子や芽が出て成長していく様子を観察し、記録していく。小学生のときにやったクロッカスの水耕栽培ですが、大人になってそのクロッカスを、意外なところで見かけました。それは、田んぼ。新潟県村上市(旧荒川町)は、稲作と球根栽培で知られる地域で、米を収穫した後の水田を利用した水田裏作としておこなっているのが、クロッカスやチューリップの球根栽培です。特にクロッカスは作付面積、出荷量ともに全国シェアの50%を超え、球根生産日本一を誇ります。

クロッカス05.jpg 栽培されているのは海に近い金屋地区で、3月上旬頃から田んぼを彩り始めます。花は黄、白、紫、紫の絞りの4種類。クロッカスにも流行があるそうで、以前は紫の花が好まれたそうですが、出かけた頃の流行は黄色、それもいくつもの花が次々に咲いていくものが人気とか。今は、何色が人気なのでしょうか。50戸ほどの農家がそれぞれ自分の田んぼでつくっているため、1カ所にかたまっているわけではなく、広範囲に渡って点々と見られます。

クロッカス02.jpg 天気がいいといってもまだ3月。風は冷たいし、畑の向こうにくっきりと見える飯豊の山々にも、まだ多くの残雪があります。北風が当たる場所は、やはり花の咲きが遅いようです。ちょうど、畑仕事をしていたお母さんがいたので、いろいろ聞いてみました。田んぼに植えられたクロッカスは、チューリップなどと同じで球根を育てて出荷するためのもの。種はオランダから輸入しているそうです。種は5〜6年で弱るため、その度に輸入。その種にも当たり外れがあり、お母さんのところの種は「今年取り寄せたものはよくなかった」とか。種は1回取り寄せると100万円近くかかるらしく、ギャンブルに近いそうです。手間のかかる仕事でもあり、今の若い人たちでやろうという人はいないようですね。

クロッカス04.jpgクロッカス03.jpg 「鳥がついばんじゃって。蜜でも吸うんだろうかねぇ」。お母さんが指差す方を見ると、クロッカスの花びらが散乱していました。後でダイアナ・ウェルズの「花の名物語」を読んでいたら、「クロッカスの球根は鼠の大好物であり、リスも根を掘り返すし、鳥たちも花びらをつつくのが好きだ。鳥は特に黄色の花が大好きだ」と書かれていました。言われてみれば、荒川の畑で鳥がついばんでいたのも、黄色のクロッカスだったような気がします。それにしても、黄色の花を狙うのはどうしてなんでしょう?

撮影/'97.3.19

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ソバ(1) [作物の花]

<長野県長野市・新潟県小千谷市>ソバ(1)01.jpg 山裾から冷たい霧が流れ下って、山里の窪地を埋めてしまうような土地に多いソバの産地。冷涼な霧がソバに甘み、香り、粘りを与えるのだそうです。長野県北部、戸隠山の南東麓に位置する戸隠のソバも、そうした「霧下ソバ」と呼ばれる一つ。戸隠神社奥社の参拝帰りにそばをいただきましたが、とてもおいしかったですね。
ソバ(1)02.jpg

標高1000m前後の戸隠は、昼夜の気温差が大きく、霧が発生しやすいのだそうです。そのためか、何度か訪れていますが、すっきり晴れたことがありません。花が咲く9月に向かったのは、戸隠そば博物館近くの広いソバ団地。この日も、どんよりとした雲に覆われたまま。一瞬日が差し、あわてて畑全体が見渡せる場所まで斜面を駆け上ったのですが、1枚撮ると太陽はまた雲に覆われてしまいました。

ソバ(1)03.jpg ソバはタデ科の1年草。原産は中央アジアから中国東北部とされ、日本へは朝鮮半島を経由して伝来し、10世紀頃から一般に栽培され始めました。白い小さな花が密集して咲きますが、かなり前に長野県阿智村で赤い花が咲く「高嶺ルビー」という品種のソバ畑を見たことがあります。白い花も可憐ていいですが、赤い花もまた違った魅力があります。ソバの花は、朝7時頃から開き始め、11時頃にはだんだん花を閉じていくので、花を見るなら午前がお勧めです。葉もハート形をしていてかわいいです。

ソバ(1)04.jpg 織物の産地として知られる新潟県小千谷市もそばの産地。ちぢみ織りの糸を縒るときに、毛羽立ちを抑える糊づけにフノリという海藻を使いますが、魚沼地方ではこのフノリをつなぎにしてそばが打たれてきました。このフノリそばを、杉板をへいで(剥いで)つくった「へぎ」と呼ばれる器に持って出されます。
ソバ(1)05.jpg
 魚沼コシヒカリで知られる通り、小千谷は米もおいしい地域。ソバも昔から作られてきましたが、開田によって稲作に転じていきました。減反政策によって、転作作物としてまたつくられ始めましたが、面積消化作物という意味合いが強かったようです。そこで、名実ともに魚沼をソバ産地にしようと、そば屋、生産農家、県が一体となった研究会を発足。一体となったソバの生産体制づくりが始まりました。地元の粉は、利きソバでも香りが違うと評判がよく、他のソバ産地の粉と比べても遜色がないという評価をもらっているそうです。郊外の五辺地区や小栗田地区のソバ畑では、ちょうど白い花が咲き始め、見事な景観をつくり出していました。

撮影/'98.9.15'01.9.23

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ヘチマ [作物の花]

<富山県射水市>ヘチマ01.jpg 銭湯に掲げられた、「わ」の字が書かれた板。裏側には「ぬ」の一文字。(湯が)沸いた、(湯を)抜いたのシャレで、営業中、準備中を意味するそうです。江戸時代のシャレっ気には脱帽しますね。そのお風呂で活躍したのがヘチマです。ヘチマの語源も、シャレが利いています。古くは「糸瓜(イトウリ)」と呼ばれていたヘチマ。このイトウリの「イ」がいつの間にか抜けて「トウリ」に。このトは、イロハニホヘトチリヌ…でいくと、ヘとチの間にあることから、ヘチ間、ヘチマとなったといわれています。シャレを利かせた名だということは、それだけ庶民に親しまれていたということでしょう。

ヘチマ03.jpgヘチマ04.jpg 富山県射水市に「ヘチマ産業」という会社があります。町おこしでヘチマ栽培に取り組み、生産者たちで立ち上げた会社です。ヘチマ化粧水を始め、ヘチマたわしなど、さまざまな商品を開発し、販売しています。ヘチマの花を見たいと思い、代表の瀧田さんに連絡を取り、畑を見せていただくことにしました。射水市の旧大島町は富山市の西。瀧田さんは外出中でしたが、会社の方に了解を得て畑を見学。ヘチマ畑は会社からほど近い、住宅地に隣接した場所にありました。棚には大きなヘチマが鈴なりにぶら下がっていて、花と実を同時に見ることができます。この日は雲が広がるパッとしない天気でしたが、かえってヘチマの黄色の花が目立ちます。

ヘチマ02.jpg

 ヘチマはウリ科の一年草で、熱帯アジアが原産。日本には江戸時代初めに渡来し、広く栽培されています。夏から秋にかけて直径510cmの黄色の花を咲かせ、実は熟すと強い網状繊維が発達します。一日に2030cmも蔓を伸ばす時期があり、油断するととんでもないところに絡み付いて、はぎ取るのに苦労するそうです。棚で栽培されていたのは、たわしをつくるためのヘチマでした。

ヘチマ05.jpg

 ヘチマ棚の隣には、地面に直に蔓を這わせた畑がありました。ここも、花が満開です。緑色の葉の中に黄色の花が模様のように咲き、目を楽しませてくれます。作業をしている方がいたので訊ねてみると、ここはヘチマ水を採る畑なのだとか。ヘチマの茎を切り、容器に差し込んでおくと液がたまるそうです。仲秋の名月の頃が、一番良い水が採れるとのこと。江戸時代、ヘチマ水は「美人水」と呼ばれ、美顔化粧水として親しまれたそうです。化学的につくられた製品が多い中、最近また、こうした自然素材が見直されているのはうれしいことです。

撮影/'03.8.11

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イネ [作物の花]

<新潟県南魚沼市>イネ01.jpg 米どころ新潟で生まれ育ったせいか、正直な話、ごはんが特別おいしいと思ったことはあまりありません。けれど、他県へ行ったりすると、贔屓かもしれませんが、新潟の米はやはりおいしいと納得してしまいます。仕事でも昨年秋から、米に関する取材が多く、おもしろい話をたくさん聞きました。新潟では来年から「新之助」という新品種が一般に出回ることになっています。さて、どんな味なのか、楽しみです。そのほかにも、コシヒカリの突然変異で生まれた「いのちの壱」、寿司専用米「笑みの絆」、お弁当に適した米「みずほの輝き」、カレー専用米「華麗舞」、リゾット専用米「和みリゾット」など、注目したい米の品種がいろいろあります。

イネ02.jpg 最近は、山形の「つや姫」や北海道の「ゆめぴりか」など、各県のブランド米が評判ですが、中でも人気が高いのが「コシヒカリ」です。全国各地でつくられていますが、新潟県産、中でも魚沼産コシヒカリは別格として扱われています。しかし、誕生当初は病気に弱く、すぐに倒れてしまうため、農家からは敬遠されました。そうした中、熱心に栽培に取り組んだのが、現在の南魚沼市六日町の農家の人たち。南魚沼のがんばりがなかったら、コシヒカリは品種登録されずに、歴史の中に埋もれてしまったかもしれません。

イネ03.jpg 南魚沼市六日町に「魚沼コシヒカリ発祥の碑」があるというので探したのですが、教えてもらった道がちょうど工事中で、回り道をしたらわからなくなってしまいました。右往左往して出たのが、清流魚野川が横を流れる田んぼ。朝のやわらかな日差しを浴びて輝く緑の田んぼは、ちょうど開花を迎えていました。

イネ04.jpg 田んぼはどこでも見られますが、イネの花を見たことがある人は、あまりいないかもしれませんね。イネの花は天気のいい日、午前10時頃に一斉に咲きます。茎の先から穂が出ると開花が始まり、一つの穂が47日かかって開花して結実します。花びらはありませんが6本の雄しべがあり、花粉がある葯は白色。開花後は約3540日で成熟し、収穫できるようになります。

イネ05.jpg

 ふと思い立って、高い位置から田園風景を見ようと、スキー場のゲレンデに上ってみました。魚沼の山々、魚野川、高速道路、民家、そして緑から黄金色に変わりつつある田んぼが一望できます。見なれているせいもあるけれど、やはり田んぼの風景が一番落ち着きます。さて、お腹も空いたし、昼ごはんでも食べに行くとしますか。

撮影/'00.8.15

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