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ナノハナ [ハチミツの花]

<青森県横浜町>ナノハナ06.jpgナノハナ03.jpg 鉞のような形の下北半島を、海岸線沿いに北へ走ると、陸奥湾に面する横浜町に着きます。国道から丘の方へと上れば、そこは一面、光を映してまぶしいばかりのナノハナ畑。横浜町のナノハナは、種から油を採るために栽培されていますが、ハチミツも採られています。昭和30年代前半には換金作物の代表として栽培され、昭和43年には約750ha(東京ドーム約160)の面積があったそうです。手刈りの重労働がネックとなって作付面積が次第に減少したものの、再び増えて平成10年には200haまでになり、日本一の作付面積となりました。(現在は2位)

ナノハナ02.jpg イベント会場にもなっている一番広いナノハナ畑に行ってみました。ナノハナの向こうに、風力発電の風車が立ち並びます。空の青さがくっきりとした快晴でしたが、少しひんやりします。地元の養蜂家・澤谷さんに訊くと、51日に開花宣言が出されたものの、それから低温が続き、採ミツもままならないとか。この日も朝9時で10℃ほど、正午過ぎでも1213℃までしか上がりません。

ナノハナ04.jpg ナノハナ畑から少し離れたところに巣箱が置かれていました。一番近い畑にはミツバチの姿が見られたものの、少し離れるとほとんど飛んでいません。この低温では、元気があるミツバチでも、やっとの思いでミツ集めをしているのでしょう。幸い、満開となった数日後の3日間ほどは好天が続き、なんとかミツバチもミツを集めてくれたと、後から澤谷さんから聞き、少し安心しました。

ナノハナ05.jpg

 ナノハナのハチミツはブドウ糖の割合が多いため、採集直後から結晶が始まり、45日で完全に結晶します。豊富に含まれる消化酵素「ジアスターゼ」が熱に弱く、加熱すると約40%も減ってしまうため、結晶したハチミツを湯煎で溶かせばビン詰めも容易になるのですが、澤谷さんは加熱せずにビン詰めしているのだとか。さらに、常温で保存した場合、20℃を超えると発酵してビンからあふれることがあるため冷蔵で販売し、購入した人にも「要冷蔵」を呼びかけているそうです。おもしろいハチミツですね。

 下北半島のナノハナの開花は5月半ばですが、暖かな地域では早春に咲き始めます。採ミツするほどの面積がなくても、女王バチはミツや花粉が入ることで刺激され、産卵の準備を始めます。ミツバチの数を増やすためにも、ナノハナはもちろん、いろんなミツ源の花が各地で増えてくれるといいですね。

撮影/'08.5.12

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ソバ(2) [ハチミツの花]

<長野県長野市>ソバ(2)01.jpg

ソバ(2)05.jpg

 ひとくちにそばといっても実に多彩。一口ほどの量ごとに束ねた「ぼっち盛」という独特の盛り方で出てくる戸隠のそばは、日本三大そばの一つに数えられます。繊細でコシがあり、とてもおいしい。好きな人が多いこのソバの花から採った、ソバのハチミツがあるのをご存知でしょうか。「えッ、これがハチミツ?」と、思わず言葉に出してしまいそうなほど、変わったハチミツです。まず、色が真っ黒。味も渋味があり、お世辞にもおいしいとは言えません。他のハチミツに比べて鉄分、カリウム、ポリフェノールの一つであるルチンが豊富に含まれるためです。健康維持には有効なハチミツですが、日本では大半が脱色脱臭して加工用にまわされているそうです。フランスではこのソバミツが人気で、高級品として扱われているとか。ところ変われば、ですね。

ソバ(2)02.jpg 白い小さな花が密集して咲くソバの花は、雌しべが雄しべより長い「長花柱花」と、その逆の「短花柱花」の2つのタイプがあります。ミツバチが長花柱花に行くと頭に花粉が付き、短花柱花に行くと胸に花粉が付く。つまり、ミツバチがミツを求めてソバの花を訪ねまわることで、うまく受粉が行われるわけです。ソバの戦略が、見事に成功しています。

ソバ(2)03.jpg ソバの花は、朝7時頃から開き始め、11時頃にはだんだん花を閉じていきます。戸隠は昼夜の気温差が大きく、霧が発生しやすい地域。隣の信州新町では晴れていても、山道を上って戸隠に近づくにつれて霧や雲が太陽を隠してしまいます。ですが、この日はいい天気になりました。朝早く着いたせいか、ソバの花が朝露にぬれています。花に近づいてみても、ミツバチの姿はありません。代わりに、いろんな虫たちがソバ畑を訪れています。ソバは成長が早く雑草が生えません。タデ科で虫の被害が少ないことから、農薬を必要としないからでしょうか。

ソバ(2)04.jpg 小一時間ほどぶらぶらしていると、ブーンというミツバチの羽音が聞こえてきました。太陽もだいぶ高くなり、気温も上がってきて、ようやく数匹のミツバチを見かけるようになりました。これだけの広さのソバ畑なら、もっとミツバチがいてもいいという気がしますが、ソバ畑はかなりの広さがあるので、見かけた以上に多くのミツバチが飛びまわっているのかもしれません。クセのあるソバハチミツの販売には工夫がいるかもしれませんが、全国的にソバ畑は増えているそうなので、ミツ源としても希望が持てそうです。

撮影/'08.9.17

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シナノキ [ハチミツの花]

<北海道島牧村・新潟県新潟市>シナノキ01.jpg
シナノキ03.jpg クマが出たようです。シナノキの採ミツの様子を見せてもらおうと、北海道島牧村を訪ねたのは7月下旬。島牧に着いたとき、転地養蜂家・光源寺さんを猟友会の人が訪ねてきました。ハチミツがクマの大好物とは聞いていましたが、身近な話として聞くと緊張感も出てきます。巣箱の設置場所を見せてもらうと、ふれると電流が流れる電柵が周囲を取り囲んでいました。北海道の養蜂家も毎年、クマの被害に遭っているそうです。「一番の要因はクマのすむ場所がないということ。山に入ってみると、実をつけない針葉樹が植林してある。食べ物がないから、クマはどうしたって人里に出てこなきゃいけないわけですよ」。クマも食料がなければ、生きていけないのです。

シナノキ02.jpg

 今、猟友会の人からクマに注意するよう言われたばかりなのに、光源寺さんは平気な顔をして山へ入ろうと言います。遠目では緑に覆われた山ですが、中に入ってみると枯れた木がところどころ目に付きます。大陸から偏西風に乗って運ばれる硫黄酸化物が原因ではないかと考えられているのだとか。日本海側だと、酸性雪が冬の間そこにとどまるため、影響が大きいようです。

シナノキ05.jpg

 島牧ではシナノキが林道から離れたところにあったので、間近で花を見ることができませんでしたが、3年後の夏に自宅近くで見ることができました。街路樹がシナノキで、ちょうど花を咲かせていたのです。近づいてみると、ミツバチがミツと花粉を集めて飛びまわっていました。街路樹もよく調べてみれば、ミツ源となる木がそこかしこに植えられているかもしれません。シナノキの花は、初夏から夏へと移り変わる時期、少し緑がかった黄色い花を付けます。近づくと、かすかに爽やかな甘い香り。葉はハート形で先が急に細くなり、縁に鋸の歯のようなギザギザがあります。たくさんの小さな花が付く長く垂れ下がった柄には、幅の狭いプロペラのような包葉が付いていて、種が風で運ばれやすくなっています。

シナノキ04.jpg やや黄褐色ではっきりした香りがあり、野性味のある甘みを持つシナノキのハチミツ。意外なことに、タバコの香り付けに使われているのだとか。JT日本たばこ産業のホームページを見てみると、「たばこ添加物リスト」に、確かに香料として記載されています。味ではなく、香り付けというのが驚きですが、シナノキハチミツならではの使い方ともいえます。ハチミツの使い方も、工夫すればまだまだありそうですね。

撮影/'05.7.23'08.6.18

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クローバー [ハチミツの花]

<北海道北見市・訓子府町>クローバー01.jpg クローバーやタンポポが生えていた空き地や原っぱも、最近はあまり見かけなくなりました。今、まとまって見られるのは、牧草地が広がる北海道くらいでしょうか。その北海道でも、クローバーは減っているそうです。酪農家は牧草地をつくるのに、イネ科の牧草に足りないタンパク質やビタミンを補うため、クローバーなどのマメ科を混播で植えて牧草をつくります。ところが最近は、マメ科ではあるけれど背丈が高くて飼料価値に優れたアルファルファだけを植えるようになったのです。

クローバー02.jpg 北見市を訪れたのは6月29日。クローバーはすでに咲いていましたが、この日の最高気温は13℃ほど。いくら北海道とはいえ、6月末にこの気温は予想外。この寒さではミツバチたちも元気がありません。異常気象と片付けてしまえば簡単ですが、どこかおかしい。翌日、かろうじて正午過ぎに20℃ほどに。前日に訪れた巣箱が置かれた場所を訪ねると、元気にミツバチたちが飛びまわっていてひと安心です。多くはニセアカシアの方に行っているようですが、巣箱の周辺にクローバーが少し群生しているので、ここでミツを集めているのもいます。

クローバー05.jpgクローバー03.jpg クローバーの和名は「ツメクサ」。これは昔、荷物を梱包する際に、緩衝材としてクローバーを詰めていたことから。白い花を咲かせるホワイトクローバーがおなじみですが、少し大柄な赤紫の花を咲かせるレッドクローバーもあります。冷涼で湿潤な気候を好み、3050ほどの小花を球形につけるクローバー。そのハチミツは、世界的には最も生産され、親しまれています。ハチミツの風味もよく、マイルドな甘さが特徴です。

クローバー04.jpg 北見市の隣の訓子府町と陸別町の境あたりで、まだ刈り取られていない牧草地を発見。背の高い牧草が一面を埋めていますが、赤いレッドクローバーがアクセントのように顔をのぞかせていました。よく見ると、背の低いホワイトクローバーも、背の高い牧草の間に見え隠れしています。しばらく眺めていたら、ミツバチが1匹、レッドクローバーに留りました。人の目線で横から見ていると背の低いクローバーは見つけにくいものの、真上からなら案外簡単に見つけられるのかもしれません。一度刈り取った牧草地では、ホワイトクローバーがいち早く芽を吹いて花を咲かせるので、写真を撮るならそのときがいいかもしれないと、北海道の養蜂家が言っていました。一面クローバーの花が咲いた牧草地、一度見てみたいものです。

撮影/'08.6.2930

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トチノキ [ハチミツの花]

<青森県平川市>トチノキ01.jpg 諸説あるようですが、トチノキがたくさん生えていたことから付いたといわれている地名が「栃木」。トチノキは栃木県の県の木にもなっています。冷涼で水が豊富な環境を好むそのトチノキが多く見られるのが、十和田湖の一帯。この十和田湖近くで、転地養蜂家がトチノキのハチミツを採集しているというので訪ねました。巣箱が置かれているのは、道路から車がやっと通れる小道を少し入った場所。道路からは死角になっていて、一般の人は気づかないに違いありません。奥が広く空き地になっていて、巣箱が並んでいました。

トチノキ02.jpg 周りにはトチノキがたくさんあり、ちょうど花が満開。小さな花が円錐形のローソクのように集まって形づくり(円錐花序)、意外ときれいな花です。木との距離があるので、なかなか花を間近で見ることはできませんが、目を凝らすとミツバチたちがミツを求めて飛びまわっています。

トチノキ03.jpg トチノキは、開花から3日以内の花は花ミツと花粉をつくり出しますが、このときミツバチにミツの在り処を示す花弁のミツ標は黄色です。しかし、4日以降は花ミツも花粉もつくるのを終え、花弁のミツ標の色も赤色に。確かに、よく見れば白い花の中に、黄色や赤色のミツ標があります。また、ミツバチは円錐花序の下の方にまず留まり、花のミツや花粉を集めながら上へと移動し、一番てっぺんから飛び立つのだとか。トチノキの戦略がミツバチにそういう動きをさせたのか、ミツバチの習性に合わせて花を進化させたのか、トチノキは花序の下の方に雌花が多く、上の方に雄花が多いそうです。ミツバチは花粉をたくさん付けて花序のてっぺんから飛び立ち、別の花序でその花粉を雌しべに付けていくのです。トチノキの戦略がまんまと成功しているというか、自然はうまくできているものだと感心しますね。

トチノキ05.jpgトチノキ04.jpg この辺のトチノキはどれも大木ばかり。1本でかなりの数の花を咲かせます。トチノキは芽を出してから成長し、花をつけてミツを出すようになるまで5060年もかかるそうですが、樹齢100年を超えるトチノキなら1本で1日1斗のミツを出すのだとか。トチノキのハチミツは、少し赤みがかっていて独特の風味があり、やわらかな甘みがあります。トーストなどにもよく合い、おいしいです。かつて、救荒食料として植えたトチノキは今、大木となってハチミツという恵みを与えてくれます。環境を壊さないようにし、大切に次代に残していきたいミツ源樹です。

撮影/'04.6.4

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ヒマワリ [ハチミツの花]

<新潟県津南町>ヒマワリ01.jpg 大輪の花を咲かせるヒマワリは「日回り」といわれますが、実際にはつぼみのうちは太陽を追いかけるけれど、花が咲くと東を向いたままとか。広く栽培しているヒマワリ畑を見れば、全部同じ方を向いているから壮観です。

ヒマワリ03.jpgヒマワリ05.jpg 加工用トマトやトウモロコシ、雪下ニンジンなどの畑が広がる新潟県津南町の沖ノ原には、広いヒマワリ畑があります。農家たちが連作障害の防止と観光地づくりのためにと、1991年から植え始めたもので、今では4ha50万本に。当初は手描きのベニヤ板の小さな案内看板くらいしかなく、なかなかたどり着けなかった覚えがありますが、今ですっかり有名になりました。しかも、観光客のために畑を3分割して開花時期をずらし、7月下旬から8月中旬まで楽しめるようにしているそうです。ヒマワリの迷路や展望台などが設けられ、観光客のための露店までありました。

ヒマワリ02.jpg

 真夏の太陽の下、このヒマワリ畑をせっせと飛び回っているのがミツバチです。広大なヒマワリ畑が広がるヨーロッパなどではヒマワリのハチミツも販売されていますが、日本ではほとんど見かけません。ミツとともに花粉も提供してくれるヒマワリは、花粉源となっているのです。糖分を凝縮したハチミツがごはんとすれば、タンパク質や脂質、ビタミンを含む花粉はおかずの役割。大きく成長しなければならない幼虫は花粉が不可欠。花を訪れるミツバチを観察していると、足に黄色やオレンジ色のボンボンのような塊を付けて飛んでいるハチがいることに気づきます。この塊は「花粉団子」と呼ばれるもので、花から集めた花粉をハチミツで少し湿らせ、ミツバチの後ろ足にある「花粉かご」に付けて持ち帰ります。巣に持ち帰った花粉団子は、六角形の貯蔵穴の中に押し込まれていきます。

ヒマワリ05.jpg ヒマワリは多数の花が集まったキク科の花で、外輪に黄色の花びらが並ぶ花を舌状花、内側の花びらがない花を筒状花といいます。筒状花が咲くと、中から雌しべを包み込んだ雄しべが現れます。雄しべの先端にある葯には花粉が入っていて、花粉がいっぱいになると葯が裂けて花粉が出てきます。一つの大きな花に筒状花がびっしりあることもあり、何匹ものミツバチが花粉を集めに飛び回っていました。ヒマワリの花を見に訪れる観光客は、ミツバチの存在に気づくでもなく、迷路で遊んだりヒマワリをバックに写真を撮ったりしていました。花粉源の花畑は、意外にたくさんあるかもしれません。

撮影/'12.8.15

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ミツバチが好きな花 [ハチミツの花]

<全国各地>ミツバチ01.jpg
ミツバチ02.jpg 日本は四季がハッキリした国で、さまざまな花が至るところで咲いています。花は、授粉をしてもらうために、虫をおびき寄せる手段としてミツを分泌します。だから、虫が一つの花を訪れてミツを吸い、満足してしまったのでは、次の花を訪れなくなり、体に付けた花粉を他の花に授粉しなくなってしまいます。そのため花は、少しのミツしか分泌せず、虫たちが多くの花を訪れるように戦略を立てているのです。ミツバチ03.jpg

 虫たちの中でもミツバチは、たくさん花数があり、糖度の高いミツを出す花が好きです。ミツバチが好んでミツや花粉を集める花は、何種類くらいあるのでしょうか。㈳日本養蜂協会が発行した『日本の蜜源植物』には、500種類近くが紹介されています。そのすべてが、たくさんのミツ、花粉を提供してくれるわけではありませんが、主要ミツ源・有力ミツ源だけでも、37の植物が挙げられています。

ミツバチ04.jpg

 花のミツの水分が多いとそれを濃縮する労力がかかるため、ミツバチはできるだけ糖度の高いミツを集めようとします。とはいえ、糖度の高いミツだけを選ぼうとすればムダな動きをすることになります。ミツバチは花ミツを集める採集係と、それを受け取ってハチミツに仕上げる貯蔵係がいるのですが、採集係は花ミツの集めやすさで花を評価し、貯蔵係は糖度の濃さで良いミツかどうか、あるいは採集係の仕事ぶりを評価するのだそうです。

ミツバチ05.jpgミツバチ06.jpg

 一匹のミツバチが、ある花からミツを集めて巣に戻り、貯蔵係に渡します。このときに貯蔵係が良いミツと判断すれば、糖度の薄いミツを持ち帰った別のハチがいた場合、貯蔵係に受け取ってもらえません。すると、この糖度の薄いミツを持ち帰ったミツバチは自分が探した花には固執しなくなり、良いミツを集めてきたハチにならって、その花が咲く場所に向かうようになります。そうすると、多くのハチが最も良いミツ源に集中して訪れることになり、単一の花から集めたミツでハチミツがつくられます。このとき、ミツバチが飛べる範囲は半径2キロほどなので、養蜂家が巣箱をミツ源近くまで運んであげれば、目的のハチミツをつくることができるのです。

 効率主義のミツバチは、近くのミツ源、たくさんのミツを出すミツ源、花の数が多いミツ源を優先的に訪れます。これとは別に、ハチミツの商品価値というのもあるので、養蜂家も人気が高いレンゲやアカシアに合わせてミツバチを増やし、近くに巣箱を運ぶのです。

撮影/いろいろ

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ニセアカシア [ハチミツの花]

<新潟県新潟市・北海道島牧村>

ニセアカシア01.jpg 「ハチミツの女王」とも呼ばれているのが、ニセアカシアのハチミツです。色が淡く、やさしい香りがあり、クセのない上品な甘さは日本人が好むハチミツの一つ。果糖分が多いことから結晶することがほとんどなく、クセもないことから、さまざまに利用できるのも人気の要因でしょうか。ハチミツ初心者には、ぜひおすすめです。

ニセアカシア02.jpg 新潟市北区の「海辺の森」は、ニセアカシアの木が海岸に沿って細長く続く憩いの場所。訪れてみると鈴なりの花々にミツバチたちがせっせと通い、花にもぐりこんでミツを吸っていました。大量にミツを出すときは、木の下にいると滴り落ちるほどだとか。養蜂家、特に東日本の養蜂家にとっては、なくてはならないミツ源の一つです。

 周囲に甘い香りを漂わせ、白い蝶形のかわいい花が房状に垂れ下がって咲くニセアカシア。北米原産のマメ科の樹木で、高さ25mにまでなります。日本には明治6年に導入され、荒廃地の緑化、庭木、街路樹、砂防林、肥料木、ミツ源植物、薪炭材として、全国で広く利用されてきました。根に根粒菌が付き、空気中の窒素を取り込んで利用できる形にするので荒れた土地でも育ち、いち早く地表を覆って後継樹の成長を助け、緑化を促す役目を担います。

ニセアカシア03.jpgニセアカシア05.jpg

 以前、北海道の島牧村に、転地養蜂家の光源寺さんを訪ねたことがあります。光源寺さんは島牧村で、他に利用価値の低いこの辺の山林をコツコツと購入し、ニセアカシアを植林し続けてきました。訪れたのは晩秋。光源寺さんに案内されて山に向かうと、植えてから3年ほど経つという若木の枝先にサヤが付いて風に揺れています。豆が付いているということは、花が咲いてミツバチが訪れ、受粉したということです。これらが順調に育っていけば、かなりのミツ源になるはずです。山が他人のものなら、伐られても文句は言えない。そこが、養蜂家の弱みでもあります。だから光源寺さんは、自分で木を植えようとしているのです。

ニセアカシア04.jpg

 「ニセアカシアを植林しようなんていうのは、ハチ屋(養蜂家)以外いないですよ。これからは投資も必要です。植林は、最初はほとんど失敗。植えたのが全部花を付けりゃいいけど、こればかりはわからない。でも、木がたくさんあればいいわけです。ミツ源の絶対数が少なければどうしようもないですから」。最近は、地元の協力者も増えているといいます。ニセアカシアの甘い香りで、山全体が満ちることを期待したいですね。

撮影/'07.11.5・’10.6.6

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レンゲ [ハチミツの花]

<鹿児島県さつま町>レンゲ01.jpg

レンゲ02.jpg なめらかで上品な甘さと香りを持ち、色は淡い黄色。特に人気が高く、ハチミツの王様と呼ばれるのが「レンゲ」のハチミツです。最近はレンゲ畑が減ったためか、ハチミツの中でも高価になってしまいました。レンゲはマメ科の植物で、根に固有の根粒菌を共生して空気中の窒素を固定します。窒素は植物が根から吸収する最も大切な栄養素。根粒菌が窒素を利用できる形に変えるので、レンゲは稲作などの緑肥として利用されてきましたが、化学肥料の普及などによって、姿を見なくなりました。

 春、鹿児島で転地養蜂家の光源寺さんに、レンゲのハチミツを搾る様子を見学させていただきました。転地養蜂家とは育てたミツバチと一緒に、ミツ源の開花時期に合わせて各地を移動する養蜂家のこと。現場に到着すると、巣箱を置く杉木立に陽光が差し込み、花のもとへと向かうミツバチたちが幾筋もの銀色の光になって輝いていました。

レンゲ03.jpg

 巣箱を置いた場所の周辺には、レンゲ畑が点在していました。畑の縁にしゃがんでレンゲの花を見やると、ミツバチが忙しげに花から花へと飛びまわっています。ツンと突き出た花茎の頂に、10個ほどの赤紫色の小花が集まって花の穂を形成するレンゲ。一つの花は蝶のような形をしていて、5枚の花びらがあります。雄しべと雌しべを左右から包み込む「竜骨弁」と左右に張り出して足場になる「翼弁」に、ミツバチがちょこんと乗ると体重で下がり、雄しべと雌しべが押し上げられます。そして、奥のミツを吸おうとミツバチが体を突っ込むと、花粉がミツバチのお腹に付く仕組みになっているのです。また、大きな「旗弁」にはミツ標という目印が付いていて、ミツの在り処をミツバチに教えています。

レンゲ04.jpgレンゲ06.jpg レンゲはミツバチによって授粉すると、花色が濃くなるとか。「もう受粉したから、ここには来なくていいよ」と、ミツバチたちに教えているのかも。翌朝には新しい花が咲くので、またレンゲ畑の色が違うといいます。いい天気なら、養蜂家は夕方に畑の色が変わったことで、今日はミツバチがミツを集めたと、巣箱の中を見なくてもわかるそうです。自然の仕組みは不思議でおもしろい。

 たまたま通りかかった富山市で、レンゲを見つけたことがありました。休耕田のようですが、田んぼ4、5枚ほどが赤紫色に染まっています。近づいてみると、ミツバチたちがミツ集めに夢中になっていました。春の定番の風景として、レンゲが各地で復活するといいですね。


撮影/'04.4.21

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