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トウガラシ [野菜の花]

<栃木県那須烏山市・茨城県常陸大宮市>トウガラシ01.jpg インドのカレーは大航海時代にイギリスに渡り、日本へはイギリス経由で伝わりました。イギリス式のカレーは小麦粉でとろみをつけたもので、日本の主食であるごはんにかけて食べるには好都合でした。そして、タマネギ、ニンジン、ジャガイモが北海道で大量に生産されるようになり、具として使われて現在の日本式カレーが出来上がっていったのです。日本式カレーの基本のスパイスはターメリック、クミン、コリアンダー、トウガラシの4種類。このうち辛さを受け持っているのがトウガラシです。

トウガラシ02.jpg

 かつて昭和40年代までまでは栃木や茨城でも広くつくられ、輸出もされていたそうですが、今は小規模な畑が点在するだけとか。栃木県のいくつかの役場に問い合わせると、大田原市のトウガラシ加工専業の会社を紹介されました。電話を入れると社長さんが「私も最近、畑を見てまわってないから、ご案内しましょう。会社が休みの土・日だと一番いい」という返事。花が咲く頃をお聞きし、日にちを打ち合わせて出かけました。

トウガラシ03.jpg 休日の会社へ伺い、話をうかがった後、畑を案内していただきました。畑が広範囲に渡って点在しているため、次の畑へは数10km先の隣町まで走らなければなりません。いや、大変でした。昔のトウガラシの栽培を記録したフィルムがあるからと、帰ってきてから事務所で見せていただきました。一面、真っ赤。上を向いて実をつけるのは、「栃木三鷹」というトウガラシ。社長さんの祖父・父と二代でつくり上げた、辛みの強い品種だとか。映された年代を聞き忘れましたが、少し前までこんな風景が広がっていたのかと思うと、残念でなりません。今は、こちらで育てた種を中国へ持ち込み、向こうで栽培して輸入しているそうです。

トウガラシ04.jpgトウガラシ05.jpg

 前年訪ねた場所を記しておいた地図を頼りに、翌年、自分一人でもう一度訪ねてみました。地図があるから大丈夫だろうと思っていたのですが、人間の記憶など当てにならないもの。すぐ近くまで来ているはずですが、記憶がそこで途切れています。それでも3カ所をなんとか見つけ出せました。トウガラシはナス科で、白い小さな星形の花を、うつむき加減に咲かせます。葉陰にひっそりと咲くため、遠目には目立ちません。「トウガラシがトウガラシとして自己主張する完熟期の10月もいいですよ」。社長さんに言われた通り、秋にも訪れてみると、空に向かって逆立ちした実が赤く色づき、燃えるような美しさを見せていました。

撮影/'99.7.2510.10()

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キュウリ [野菜の花]

<福島県須賀川市>キュウリ01.jpg 目立つ存在ではないけれど、無いと何か物足りない、というものがあります。たとえば、野菜ならキュウリ。生のまま酢の物や和え物、漬物、サラダなどにすることが多いでしょうか。中華風に炒め物に加えたり、キムチにしてもおいしいですね。井戸水で冷したキュウリに味噌をちょいと付けてかぶりつく。小学生の頃、田舎の祖父母の家に行くと、必ず食べていました。キュウリは未熟果を収穫しますが、そういえば完熟したキュウリを見たことがありません。おいしいのなら、完熟したキュウリが出回っても良さそうなものですが、ないところをみるとおいしくないのかも。

キュウリ04.jpgキュウリ03.jpg ヒマラヤ山麓のインド側が原産のキュウリ。紀元前1000年頃に西アジアで栽培化され、ヨーロッパ、中国北部、中国南部の三方に広がっていきました。日本には中国を経て10世紀またはそれ以前に渡来。切り口が徳川家の葵の紋に似ていることから、武士たちはおそれ多いと食べなかったそうです。一般に食べられるようになったのは江戸時代末期から。世界で400以上のもの品種があるといわれていますが、日本で栽培されているのはほとんどが細長い白イボ系のキュウリ。生食用として見栄えがよく、皮が薄くて歯切れのよいのが特徴です。

キュウリ02.jpg 福島県須賀川市は、夏秋キュウリの一大産地。夏に高温になることと、秋に北西からの冷たい風の影響が比較的少ないことが、キュウリ栽培に適しています。いつものように当てずっぽでキュウリ畑を探していると、野球場の近くで、広くはないけれどアーチ状に蔓を這わせている畑を発見。おそらく、キュウリの畑に違いありません。ちょうど、農作業をしていたお父さんがいたので、畑を見せてもらいました。キュウリは生長のスピードが速く、5月に苗を植えるとどんどん蔓を伸ばすそうです。このときは、花径3cmほどの黄色の花を、いくつも咲かせていました。収穫できそうなキュウリもぶら下がっています。

キュウリ05.jpg 話をしているうちに自慢したくなったのか、お父さんが作業後小屋からきれいに箱詰めしたキュウリをわざわざ出してきて見せてくれました。ツヤツヤで、見るからにおいしそう。箱に描かれた「須賀川キュウリ」の文字が、ブランド力を見せつけています。太陽の光をたっぷり浴びた須賀川のキュウリは味が濃く、歯ごたえもよくて、塩を振るだけでおいしいそうです。キュウリは水分が90%以上というから、暑い夏にはぴったりの野菜ですね。

撮影/05.6.25

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バジル [野菜の花]

<新潟県新潟市>バジル01.jpg 畑にハーブを植えるなんて、なんだかオシャレです。運動不足解消に始めたウォーキングのコースに小さな畑があります。家庭菜園のようですが、いろんな野菜を育てていて、中には知っているものもあり、通るたびに「お、○○の花が咲いたな、○○がそろそろ収穫だな」と、横目で見ていました。

バジル05.jpg 夏休みも終わりというとき、見たことがない植物がまとまって葉を茂らせ、花を咲かせていました。白い花は初めて見ますが、葉はどこで見たような気がします。なんだっけと思いながら、さらに1kmほど進むと、別の畑でも同じ植物が花を咲かせていました。こちらでは、たまたま畑の手入れをしていたお母さんがいたので、何を植えているのか訊いてみました。すると、「バジル」とのこと。あぁ、言われてみれば納得。葉も見覚えがあります。

バジル02.jpg 緑のつややかな葉は、香りがよく、生で食べても加熱してもおいしい。ところが、花が咲くと花に養分が取られ、葉のフレッシュさは失われて硬くなってしまうのだとか。花芽がついたら摘んでしまう人もいますが、この畑のバジルは種を取るために咲かせているのかもしれません。

バジル03.jpg バジルにはさまざまな種類がありますが、代表的なのがスイートバジル。甘くさわやかで深みのある香りが特徴です。ヨーロッパでは若葉の香りが好まれ、ハーブの王様として親しまれています。バジルといえば、イタリア料理やフランス料理に欠かせないハーブの一つ。日本でも今や、おなじみですね。バジルをペースト状にしたジェノベーゼソースは、パスタはもちろん、肉や魚のソテーのソースにしたり、ゆでたジャガイモと和えたり、さまざまな料理に使えます。特にトマトとの相性は抜群で、トマトとバジル、モッツァレラチーズのマルゲリータピッツァは有名ですね。ちなみに、トマトの近くにバジルを植えておくとトマトが甘くなるそうですよ。

バジル04.jpg インド原産のバジルはシソ科の多年草ですが、耐寒性がないため日本では1年草として扱われています。草丈が6090cmにもなり、夏になると花穂を伸ばして白や紅色がかった小さな花を咲かせます。日本に伝わったのは江戸時代で、当時は漢方薬用の植物として利用していたようです。バジルの種を水に浸しておくと、水を吸って表面がゼリーのように膨張するので、これで目に入ったゴミを取り除いていたのだとか。和名の「目ぼうき」は、ここから来ているそうです。ハーブの花もいいものですね。

撮影/'11.8.30

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東洋ニンジン [野菜の花]

<香川県坂出市>東洋ニンジン01.jpg ニンジン嫌いの人は、とことん嫌いのようです。料理に入っている細かなニンジンも、きちんと避けて食べる知人に、感心したことがあります。新潟の津南町に、ニンジン嫌いでも食べられる、「雪下ニンジン」というおいしいニンジンがあります。ニンジンの花が見たいと思い、問い合わせると「花が咲く前に収穫する」という返答。ならばと金時ニンジンの産地、香川県の坂出市役所に問い合わせると、採種用の畑の写真と詳しい地図、資料を送っていただきました。最近は西洋系のニンジンが主流となっていて、東洋系はこの金時ニンジンが栽培されるのみとか。坂出の金時ニンジンの生産は、昭和年にムギに代わる作物として導入されたのが始まりだそうです。

東洋ニンジン02.jpg 高松市から坂出市に入り、国道11号線から橋を渡って対岸へ。市役所から送っていただいた地図には、ニンジンの採種畑に×印がつけてあるのですが、土地鑑がないためなかなか採種畑を見つけられません。何度か行ったり来たりし、勘を頼りに車を走らせると、前方に白い花が咲く畑が見えてきました。ニンジンは、茎の先に白い小さな花が傘状に集まって咲きます。畑まで来て見てみると、どうやらニンジンの畑のようです。ただ、近所の家庭菜園で咲いていた、小さくて可憐なニンジンの花とはあまりに違います。大人の背丈よりも高く、茎も太くて逞しい。甘〜い香りが周囲を包み、その香りに誘われて集まって来た虫たちが、しきりに花に顔を突っ込んでいます。これは本当にニンジンの花?

東洋ニンジン04.jpg東洋ニンジン05.jpg 採種畑は坂出市内に数か所あるといいます。他の畑を確かめてみようと、高松市との境にある畑を探しに行ってみました。ここも背の高い大輪の菊のようなニンジンの花が咲き乱れています。花としては盛りを過ぎているようで、白がくすみかけている花もあります。一段高いところに上ってニンジンの花を見ると、向こうの方に坂出港と瀬戸大橋がかすかに望めました。
東洋ニンジン03.jpg
 「新潟から来たの?」。畑で作業していたお母さんに、ニンジンの畑であることを確かめ、新潟から来たことを告げると驚いたような顔をしました。観光地ならともかく、畑以外何もない町はずれに、滅多にお目にかからない県外ナンバーの車を見つければ、驚くのもムリないかも。お母さんが畑の中へ入っていくと、姿が隠れて見えなくなりました。ニンジンが赤いから「金時」の名があるのでしょうが、この花の力強さこそ金時の名にふさわしいかもしれません。

撮影/'01.6.7

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チンゲンサイ [野菜の花]

<新潟県新潟市>チンゲンサイ01.jpg あっという間に、畑が住宅地に変わってしまいました。今の場所に引っ越してきた10年前、周囲にはまだ畑がたくさんありました。すぐ前もカボチャ畑で、近くにはネギやキャベツの畑もあったのですが……。近くの大型スーパーの裏にも、遊休地や畑、田んぼが広がっていました。イネやカボチャなどの花をここら辺りで撮った記憶があります。新しい施設が建つと、ずっと見慣れていたはずなのに、以前は何がそこにあったのかわからなくなるから不思議です。

チンゲンサイ02.jpg 散歩していると、花が満開になっている畑がありました。そんなに広くないので、おそらく個人の畑でしょう。さまざまな花が列になって咲いていて、野菜の花に違いありません。中でも、ひときわ鮮やかな黄色の花を咲かせていた一角がありました。菜の花のようですが、よく見るナタネとは違うようです。次の日、カメラを持って再び畑を訪れると、畑の持ち主らしきお母さんがいたので、何の花か訊いてみました。答えは「チンゲンサイ」。忙しくて収穫できずにいたら、花が咲いてしまったとのこと。お母さんにとっては、収穫できずにおいしいチンゲンサイを食べ損なったのは残念ですが、おかげで貴重な花を家のすぐ近くで労せず見ることができました。

チンゲンサイ03.jpg チンゲンサイはアブラナ科の中国野菜。葉は丸みを帯び、お尻の部分が張って愛らしい姿をしています。耐暑性が強く、ビタミンやミネラルをバランスよく含む、栄養豊富な野菜です。お浸し、和えもの、クリーム煮など、幅広く利用できます。冬の低温に当たり、春になって気温が徐々に上がって暖かくなると、一気にとう立ちするのがアブラナ科の野菜の特徴で、この鮮やかな花色が目を引くチンゲンサイのほかにも、畑にはとう立ちしたキャベツ(下左)やダイコン(下右)が花を咲かせ始めていました。

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 葉菜類のとう立ちは、種採り目的か収穫し忘れでないと見られないので、とても貴重です。少なくなったとはいえ、少し散歩がてら足を伸ばすと、この辺にも畑がまだ広がっています。米どころ新潟は田んぼがどこまでも続いて、独特の風景をつくり出していますが、野菜も人気の高い枝豆やナス、トマトなどの畑は多いです。農家がつくるそうした畑に混じって、市民農園もあり、定期的に脇を通ると、蕾だったものが花が咲いたり、花が散って実ができてきたり。畑で野菜を育てている人は、収穫はもちろん、そうした生長の過程も楽しいのかもしれませんね。

撮影/'11.4.30

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ナス [野菜の花]

<新潟県長岡市>ナス01.jpg ナスの肉味噌オーブン焼き、蒸かしナス、揚げナスのシソ味噌乗せ、ナスキムチ、ナスの味噌和え……。以前、仕事で県内各地の農家のお母さんたちを訪ね、いろんな地元ならではの料理を披露していただきました。中でも多かったのが、旬を迎えていたナスを使った料理。さすがにナス王国といわれる新潟です。ナス自体は個性があまり強くありませんが、逆にどんな調理方法にも合い、レパートリーが広い野菜のひとつです。特に、どこへ行っても出されるのが「ナス漬」でした。十全ナスの漬物はおいしかった。

ナス03.jpgナス05.jpg 全国に約170種類以上あるといわれるナスですが、新潟にも地域ブランドがいくつかあります。新潟市北区のやきナス、新潟市西蒲区の越後白ナス、新潟南区のえんぴすナス、新発田の久保ナス、南魚沼の巾着ナス、糸魚川の越の丸ナスなど、ホントにさまざまな種類があります。初夏から晩秋にかけて収穫されるナスは、露地栽培が多いそうです。というのも、ナスの皮のツヤのある黒紫色はアントシアニンという色素によるもので、ある波長の紫外線に当たることで形成されます。そのため、日差しをたっぷり当てて栽培しなければならないのだそうです。

ナス02.jpg 長岡市小国の黒十全ナス「八石ナス」もその一つ。このナスは、八石山麓の畑で栽培され、色ツヤと甘さ、歯ざわりの良さが特徴で、汁気が多く、皮がやわらかいので浅漬けに向いています。小国町に近づくと濃い霧が辺りを包み始めました。公園の駐車場に車を留め、しばらくボーッと考え事。こんな時間もいいものです。1時間ほどして霧が晴れ始めたので、ナス畑を探すことに。幹線から逸れて小道を奥へと入っていくと、さっそくナス畑を発見。そう広い畑ではないけど、花が咲いています。下の方には実も。巾着のような形、間違いなく八石ナスです。

ナス04.jpg

 ナスは薄紫色の花を下向きに咲かせます。しかも、葉の陰に隠れるように咲くので、あまり目に付きません。けれど、5本の鮮やかな黄色の葯と薄紫の花びらとのコントラストが鮮やかで、なかなか美しい。次々と花が咲いては光沢のある紫紺色の実がなるので、畑では花と実と両方を見ることができます。まだ、生り初めのようで、これからが本格的なシーズンのようです。そういえば、農家のお母さんが「秋のナスもうまいよぉ」と言っていました。秋ナスは嫁に食わすなということわざがあるくらいですからね。ナスの浅漬け、食べたくなってきました。

撮影/'00.7.22

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エダマメ [野菜の花]

<新潟県新潟市>エダマメ01.jpg 暑い夏の到来とともに、出番が増えるのが冷えたビールとエダマメです。新潟県は作付け面積で第1位を誇る、エダマメの一大生産地。出荷量は6位ですが、これは自家消費や近所に配る農家が多いため。エダマメ好きな県でもあるのです。新潟のエダマメのおいしさには定評がありますが、年々需要の方が大きく上回り、注文に応じきれないという超人気のエダマメが新潟市黒埼地区にあります。山形県鶴岡市の「だだちゃ豆」の流れをくむ「黒埼茶豆」です。

エダマメ03.jpgエダマメ04.jpg 昔は田んぼの畔に植えられていたエダマメも、最近では畑はもちろん、転作によって田んぼでもつくられています。作業能力に合わせ、数列ずつ植える時期をずらして、順に収穫できるよう工夫しているそうです。近所のエダマメ畑を覗くと、一番成長しているものは青々とした葉が風に揺れ、葉の合間からふくらんだエダマメのサヤが顔を覗かせていました。収穫は、例年8月初めから始まり、9月初めまで続くそうです。植え付けから収穫までの期間、雨が少ない方がいいエダマメができるのだとか。エダマメの花はというと、葉に隠れていてちょっと見ただけではわかりません。葉の隙間から覗き込んでみると、葉の腋に小さな花を咲かせていました。白い花が咲く畑と紫の花が咲く畑がありましたが、これは品種の違いでしょうか。

エダマメ02.jpg エダマメは、夏バテを防ぐともいわれています。野菜の中では特別にタンパク質を多く含み、カルシウムやマグネシウム、リン、鉄、銅などの無機質、ビタミンもA、B1、C、葉酸など豊富で、とても優れた野菜といえます。気温が高いと、血中のヘモグロビン含有量が低下するので、タンパク質の補給が必要ですし、また無機質やビタミンは体の代謝をスムーズかつ効率よく調節するのに必須の栄養素です。なので、夏にエダマメを食べるのは、理にかなってるんですね。ビールにエダマメという組み合わせも、胃を始めとした身体に負担をかけない飲み方ということになります。

エダマメ05.jpg ところで、エダマメは未熟なうちに収穫した大豆だって、ご存知でしたか? これこそ本当のマメ知識ですね。もっとも今は、エダマメに適した品種が使われているようなので、エダマメをそのまま成熟させて大豆にするということはなさそうです。食べ始めると、口の中で豆の甘みと塩のしょっぱさが広がり、手が止まらなくなるエダマメ。暑い夏は嫌いですが、エダマメがおいしい夏はこの上なく好きです。

撮影/'11.7.16

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ベニバナインゲン [野菜の花]

<群馬県中之条町>ベニバナインゲン01.jpg 日本ロマンチック街道。このシャレた名の道は、本場ドイツのロマンティッシュ・シュトラーセにあやかった、長野県上田市から栃木県日光市まで続く全長320kmの道です。自然や歴史に満ちた情緒たっぷりの街々を抜けていきますが、制定当初は小諸から日光までの全長230kmでしたが、以後、周辺の市町村が参加して小径もでき、現在の形になっています。この街道沿いで、山村の原風景を今に残すのが旧六合村。ベニバナインゲンの産地です。六合と書いて「くに」と読みます。

ベニバナインゲン02.jpg 国道から逸れて山道をしばらく上っていくと、突然、開けた場所に出ました。明治32年頃に開拓された田代原です。雄大な山並みが背後に連なります。旧六合村では、北部の集落でだいたいベニバナインゲンを栽培しており、中でも盛んなのがこの田代原。ヘクタール単位で栽培しており、草丈が3mにもなることから、支柱を立てて伸びた蔓を這わせています。ベニバナインゲンはその名の通り、花色が鮮やかな緋色(濃い朱色)で、大きく目立つ花を長い期間数多く咲かせるため、「花豆」の別名があります。

ベニバナインゲン03.jpg 「色がもうきれいじゃないでしょ」。ベニバナインゲンの花を撮っていると、遠くで声がしました。振り向くと、この田代原に畑を借り、太田市から通ってイチゴをつくっているという農家の方が、畑仕事の手を休めてこちらの様子を眺めています。間にはふかふかに耕された畑があり、15mほどの距離までしか近づけず、お互いに大声で話すはめになってしまいました。7月20日ぐらいが、花びらの緋色がもっともきれいだというから、少し遅かったようです。

ベニバナインゲン05.jpgベニバナインゲン07.jpg 冷涼な気候を好むベニバナインゲンは、標高9001300mが栽培適地とされ、開花・結実時期の気温が30℃を超える地域では、花が咲いてもほとんど結実しないのだとか。そのため、北海道や東北、長野県、群馬県、山梨県の高冷地など、夏に冷涼な地域のみ栽培されているようです。標高1100mほどの田代原のベニバナインゲン豆は、大粒で品質が良いとされ、種用に珍重されています。田代原の帰り道、農協の直売所でこのベニバナインゲンの煮豆缶詰をおみやげに買って帰りました。豆は肉厚で大きく、赤紫色の地に黒の斑が入っていることから「紫花豆」と呼ばれています。それにしても、大きな豆です。食べると、ほどよい甘さで、ホクホクしておいしい。もっと買ってくればよかったと、少し後悔したほどです。

撮影/'00.8.6

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地ダイコン [野菜の花]

<長野県坂城町>地ダイコン01.jpg
地ダイコン05.jpg 頭の奥の方が、ツーンときて思考停止状態に。とにかく辛い。皿に盛ったそばにツユをぶっかけて食べる「越前おろしそば」。その取材で、福井県武生市を訪ねたとき、そば屋のご主人が「辛みの一番強い地ダイコンがあるけど、これでやりましょうか。辛いのは大丈夫?」と、小ぶりのダイコン(写真)を見せて訊きます。つい「せっかくだから」と地ダイコンでお願いしました。一口食べてみたけど、んッ? さほど辛くはない。と思ったら、頭の奥の方で、ツツーンと辛さが広がっていくではありませんか。辛さは予想以上に強烈でした。「心臓が悪い人は、やめた方がいいぐらい。あんまり辛いんで、途中でギブアップする人もいますね」とご主人。食べる前に言って欲しかった……。

地ダイコン02.jpg

 下膨れの形とねずみの尻尾のような細長い根が特徴の、坂城町の「ねずみダイコン」も辛みの強い地ダイコン。千曲川沿いの傾斜地を利用してつくられているそうなのですが、国道18号線から適当なところで坂を上っていくと、新興住宅地に出ました。どこにも問い合わせず、思い立って出かけてきたものの、さすがに何の当ても無いとダイコン畑は見つかりません。あきらめかけると、一軒の農家の家のすぐ横、ほんのわずかですが、白い花を咲かせたダイコンの畑に出逢いました。地ダイコンは、各農家がつくる分を自家採種しているとのこと。周囲を探したけど、広い畑は見当たりません。

地ダイコン03.jpg地ダイコン04.jpg 「これだけで、十分な量のダイコンがつくれるんだよ」。ダイコンの花が咲く畑の隣で、ブドウをつくっているおじさんが、ちょうど農作業に来ていて教えてくれました。「この先のうちの畑にもダイコンの花が咲いてるから見てきな。いろんな角度から撮ってよ」と、なかなかアピール上手。行ってみると、住宅地の外れに、やはりわずかな面積ですが、花を咲かせたダイコンの畑がありました。ダイコンは、1mほど伸びた茎の先に、白い十字形の花を総状につけます。花びらの先の方が紫色を帯びている花もありました。近くの畑では、モモの花や菜の花が満開。ダイコンの白と、モモのピンク、菜の花の黄、空の青のコントラストが、気持ちいいほどです。

 越前そばの強烈な辛さが、まだ頭に残っているものの、もう一度食べてみたいと思わせる魅力があります。坂城町周辺には「おしぼりうどん」という、地ダイコンの絞り汁に信州味噌を溶いて食べるうどんがあるそうです。一度体験してみたいですね。

撮影/'00.5.3

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アスパラガス [野菜の花]

<長野県飯山市>アスパラガス01.jpg 国道117号線になっている千曲川の堤防を走っていると、なにやら見覚えのある野菜の畑が見えてきました。1年前、北海道で見たアスパラガスの畑です。もしかしたら、ちょうど花時期かもしれないと勘が働き、土手を下りてみました。どうやら勘が当たったようです。飯山市はアスパラガスの収穫量全国トップクラス。この河川敷の畑をさっと見渡しただけでも、かなりの広さだとわかります。

アスパラガス04.jpgアスパラガス05.jpg 北海道での体験があったのですぐにわかりましたが、普通はこれがアスパラガスの畑とは誰も思わないに違いありません。「毛むくじゃらな生き物」といった感じで、ユニークな姿をしています。下の方から覗くと、「アスパラガスの森」といった風にも見えます。アスパラガスは、別名「オランダキジカクシ」。この生い茂った陰に、雉も隠してしまいそうだと名づけたのでしょうが、昔の人はうまい表現をするものです。

アスパラガス03.jpg 日本には江戸時代後半に観賞用として伝わり、明治初期に北海道開拓にともなって食用の種を導入。大正時代になって本格的に栽培されるようになりました。アスパラガスは150種ほどあるそうですが、食用になるのは1種だけとか。アスパラガスは定植してから2、3年かけて株を育てます。その後、収穫できるようになりますが、多年生なので同じ株から1015年ほど収穫ができます。グリーンアスパラガスとホワイトアスパラガスの違いは栽培方法で、ホワイトアスパラガスは若芽に光が当たらないように盛り土をし、芽が地上に出ないうちに根元から刈り取ります。

アスパラガス02.jpg アスパラガスは、発芽の仕方がユニーク。普通は1〜2枚の葉が出ますが、アスパラガスは茎がいきなり顔を出します。私たちはこの伸び始めたばかりの若茎を食べているわけです。この若茎を刈り取らずにいると、どんどん枝分かれし、先が松葉のようになります。風が吹くとさわさわ揺れて、これが「毛むくじゃらな生き物」のように見えるというわけです。花は、遠目ではちょっとわかりにくいですが、スズランを小さくしたような、やや黄がかった白。後でわかったことですが、アスパラガスは雌雄異株。花も2種類あり、雄花の方が細長くて大きいということですが、この時はそこまでは気がつきませんでした。雌株につく雌花は、雄花から飛んでくる花粉を受け止め、赤い小さな実を結びます。露地栽培にこだわった飯山市のアスパラガスは、太くて栄養価が高く、味が濃いと評判です。

撮影/'98.6.8

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